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巨人「一軍昇格拒否事件」に見る
阿部慎之助二軍監督の使命。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2019/11/29 20:00
秋季練習のスタート前にあいさつする巨人の阿部二軍新監督(中央)。
「須藤は二軍が勝つことしか考えていない」
最終的には9月2日に吉村は代打で一軍復帰を果たすが、その間にも藤田さんと須藤さんの確執は深まるばかりで、このシーズンを最後に須藤さんは大洋(現DeNA)の一軍監督に転身することになる。
後に藤田さんが「須藤は二軍が勝つことしか考えていない」と語っていたのを覚えている。ただ、二軍で勝ち続けたことが須藤さんの評価を高め、その結果、大洋から監督として招請される道を開いた。
それもまた事実である。
新しい指導者としての道。
前置きがちょっと長くなったが、そこで考えるのが、このオフに就任した巨人・阿部慎之助二軍監督のことだった。
今季限りで現役を引退し、指導者としての第一歩に選んだのが一軍のコーチではなく、二軍の監督だった。
これは将来の一軍監督就任を想定した原辰徳監督のアイデアだったようだが、阿部自身も即決で快諾。巨人としてはこれまでにないファームから叩き上げた一軍監督像という、新しい指導者としての道を歩むことになった。
秋季練習から始動した阿部監督は、現役時代同様に選手とのコミュニケーションを大事にする印象だ。初めて会う若手選手にも積極的に声をかけ、まずはチームを掌握することからスタートした。
また11月には水野雄仁巡回投手コーチとともにドミニカ共和国で球団主催のトライアウト、プエルトリコのウインターリーグを視察。トライアウトでは投手と野手2選手の獲得にも関わるなど精力的な動きを見せている。