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NHK杯、紀平梨花vs.コストルナヤ。
トリプルアクセル競演「2つの差」。 

text by

野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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photograph byAsami Enomoto

posted2019/11/26 20:30

NHK杯、紀平梨花vs.コストルナヤ。トリプルアクセル競演「2つの差」。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

紀平(右)、コストルナヤともにトリプルアクセルを複数回成功させ、ハイレベルな争いとなったNHK杯女子シングル。

「びっくりしたけれど、理解できる」

 たった「0コンマの差」だが、それを敏感に感じ取ったのは紀平自身だった。しかも落ち込むのではなく、自分が成長するためのヒントと感じた。

「コストルナヤの85点という得点を演技前に見て、びっくりしたけれど、理解できるなと思いました。彼女のジャンプや滑りの質の良さからすれば、85点は有り得ると、もともと思っていたんです。

 私もケガを治して3回転ルッツを取り戻すこと、そしてクリーンな演技をすれば、5点くらいは稼げる。あとはコストルナヤを見習って、質の良いスケーティング、スピン、ジャンプを試合で出せれば(同じ点を)狙っていけると思いました」

トゥルソワに気を配った発言。

 一方のコストルナヤは、世界最高点について、冷静にこう語った。

「シニアでどう評価されるか分からないシーズンでしたので、得点は嬉しいです。トリプルアクセルを習得したことで可能性が広がり、大きな得点を得られるようになりました。女子はショートで4回転を入れられませんから、やはりトリプルアクセルに頼る演技になります」

 それは、4回転3種類を持ちながらもトリプルアクセルを入れていない、同門のアレクサンドラ・トゥルソワにちょっと気を配った発言でもあった。

 翌日のフリーは、さらに2人の個性の差を感じさせる展開だった。

 紀平が巻き返すには、おなじ「トリプルアクセル2本」で勝負するのではなく、4回転サルコウに挑戦する作戦が有効だった。しかしリスクは高い。

 フリー朝の公式練習で4回転サルコウの調子が上がらなかった紀平は、今回は回避を決断した。

【次ページ】 演技後には右手でガッツポーズ。

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紀平梨花
アリョーナ・コストルナヤ

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