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NHK杯、紀平梨花vs.コストルナヤ。
トリプルアクセル競演「2つの差」。 

text by

野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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photograph byAsami Enomoto

posted2019/11/26 20:30

NHK杯、紀平梨花vs.コストルナヤ。トリプルアクセル競演「2つの差」。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

紀平(右)、コストルナヤともにトリプルアクセルを複数回成功させ、ハイレベルな争いとなったNHK杯女子シングル。

演技後には右手でガッツポーズ。

「確実にファイナル進出を狙おうと思ったので、4回転はしないで行こうという思いに繋がりました。

 4回転を入れることでの足への衝撃や、体力がキツくなることもあり、他のジャンプをミスなく出来る自信があるかというと、まだ経験不足だと思いました。今の自分を見つめなおしたら『止めておこう』と最後の最後で判断しました」

 この決断は功を奏し、見事に2本のトリプルアクセルを降りる。わずかに連続ジャンプの着氷で流れが無かっただけという、ほぼパーフェクトの演技を見せた。

 演技後には右手でガッツポーズ。フリー151.95点、総合231.84点で自己ベストに迫る得点だった。

「トリプルアクセルは、これまでたくさんの経験をしたことで、試合で跳ぶという集中の仕方を最近つかめてきました。2本とも降りられて嬉しいです」

 次に滑ったコストルナヤの演技は、興味深い内容だった。冒頭のトリプルアクセルは成功し、2本目は両足着氷、残る演技はパーフェクト。大きなミスがあったのはコストルナヤのほうだ。しかし得点はフリー154.96点、総合240.00点で、コストルナヤの圧勝となった。

超ハイレベルな美技の競演だが……。

 その差は、紀平が3回転ルッツを抜いていることと、出来映えのプラス評価だった。

 各ジャッジからの評価をみていくと、「プラス5」の個数は、コストルナヤは5個、紀平は1個。「プラス4」は、コストルナヤが37個、紀平が22個。超ハイレベルな美技の競演であるが、コストルナヤのほうが一枚上手だったことが分かる。紀平は言う。

「今回は、いくつかミスした所が出来ていても、1位になれなかったと思うくらい、厳しい闘いでした。4回転が完成しても、それでも戦っていけるか分からない状況です。

 GPファイナルは、昨年の演技をしても優勝にとどかないくらい、もっと厳しい闘いになります。もっと加点がつくジャンプをしたいし、スピンやスケーティングもまだまだ質が足りない。スピードとか表情とか表現をもっともっと高めていかないと。

 ロシアの方に近づけるように、たくさん課題があるけれど、彼女達の点数を狙っていけるように頑張りたいです」

【次ページ】 紀平に対するリスペクト。

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紀平梨花
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