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ホークス王貞治会長も密着マーク!
高校通算97発、黒瀬健太への金言。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKoutaro Tajiri
posted2019/11/22 11:15
秋季キャンプで王貞治会長から直々に指導を受ける黒瀬健太。
王貞治がつきっきりで声をかける。
10月の秋季教育リーグ「フェニックスリーグ」は打撃の感じが良かったと頷く。右方向へのホームランも放った。「高校で97発打ちましたけど、引っ張った打球ばかり。センターに打ったこともなかった」。
巨人戦翌日の15日、キャンプ地で特打に指名された黒瀬はいつも以上に力を込めてバットを振っていた。打撃ケージのそばで熱視線を送っていたのは王貞治球団会長だ。
1時間打ちっ放しの特打の半分が過ぎた頃、ずっと立っていた王会長は黒瀬のすぐ後ろへすっと移動した。特打は2カ所でもう1人の選手と場所を交代しながら打つのだが、黒瀬が動けば王会長も動く密着マークだ。
交代前のラスト1球。黒瀬は打ち損ないの打球で打席を外そうとしたら、王会長から大声が飛んだ。
「なんだ、それで終わるのか。自分の納得いく打球を打って終わるんだよ」
黒瀬は掌のマメがつぶれ激痛が走っていたが、ナニクソとバットを振る。逆に力んで打球が飛ばない。
「おいおい、どうしたんだ。何だ」
最後の1球に10球ほどを要してしまった。
「なんだ『ラスト』に弱いのか? 試合はいつだって『最後』なんだぞ」
「無駄な力を入れなくても飛ぶんだ」
ホークスは高年齢化が進んでおり、特に長打力のある若手の台頭が急務となっている。Yシャツの上に球団グラウンドコートを着込んでの熱血指導は、黒瀬への熱い期待の表れでもあった。
「王会長からは、キミには立派な体と力があるんだから、無駄な力を入れなくても飛ぶんだ。ボールの芯とバットの芯を結べば勝手に飛んでいく。だからピッチャーのリリースの瞬間をガッと見て、しっかりボールを見るんだ、と言われました」
今オフには再び川端、山田と一緒にバットを振り、2020年を始動する予定だ。王会長からの金言も胸に、来季こそと闘志を燃やす。
高校通算97発。その実績に嘘はないはずだ。