野球のぼせもんBACK NUMBER
ホークス王貞治会長も密着マーク!
高校通算97発、黒瀬健太への金言。
posted2019/11/22 11:15
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Koutaro Tajiri
日本シリーズの再戦が秋の宮崎で行われ、ホークスがまたも完勝した。
11月14日、サンマリンスタジアム宮崎で行われた若手主体の練習試合。ホークスが8-4でジャイアンツに打ち勝った。
前回の当連載「野球のぼせもん」で紹介した砂川リチャードが4番バッターに座り、5回2アウト二、三塁で巨人19歳右腕の直江大輔のスライダーを強振。「高く上がり過ぎたと思ったけど、結構スタンドの奥まで飛んでくれました」と胸を張る大きなアーチを左翼ポール際へ運んだのだった。
地元スポーツ紙の「西日本スポーツ」では4番起用が決まった時も3ページ目を丸々使って大きく報じていたが、この一発の翌日、さらに2日後にも「王会長砂川キング指令」と大見出しを打って2度も一面記事に抜てき。ホークスファンの中ではちょっとした“時の人”として扱われている。
「リチャードばっかり目立っているんで、ちょっと悔しいですよね」
サンマリンスタジアム宮崎のダグアウトで道具を片づけながら、記者に囲まれる砂川をちらっと横目に見て呟いたのは、同じ右打ち内野手の黒瀬健太だった。冗談っぽい口調で顔は笑っていたが、内心は本当に悔しかったはずだ。
チャンスというより、危機感。
黒瀬はこの試合で、砂川より先に本塁打を放っていた。4回2アウト一、三塁から今季一軍で8試合に登板した大江竜聖の高め直球をタイミングよく振りぬき、力強い打球を左翼席中段へ叩き込んだ。
「この試合、僕にとってはチャンスとかではない。とにかく打たないといけないと思っていました」
4番に起用されて「緊張しました」と笑っていた砂川に対し、黒瀬からひしひしと伝わってきたのは後がないという危機感だった。