球体とリズムBACK NUMBER
今Jで最もホットな男はマリノスに。
仲川輝人の想像力と、異能の技術。
posted2019/11/16 11:30
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
静かに澄み切った瞳の先には、ゴールへの道筋が描かれている。
大詰めを迎えた今季のJ1で優勝を争う横浜F・マリノスの急先鋒、仲川輝人は「シュートまで一連のイメージを持ってプレーできている」ことが好調の理由のひとつだと明かす。目覚ましいブレイクを遂げつつある彼の落ち着いた口ぶりには、確かな自信が感じられる。
“ハマの韋駄天”の異名を取る俊足FWは、今のJリーグで最もホットなアタッカーだ。身長161センチの小兵は、群を抜くスピードと両足からの高精度キックを武器に、今季のJ1で決定機を連発し、10月には自身初のJ1月間MVPに選出された。
同月に行われたリーグ戦は2試合。第28節ジュビロ磐田戦では快速を飛ばして先制点となるオウンゴールを誘うと、終盤にはボックス右でフィードを受け、迫るDFを一瞬だけ外して直線の球筋で逆サイドのネットを揺さぶった。
第29節湘南ベルマーレ戦でもペナルティエリア右でパスを受けると、DFの目前でボールを少しだけ左に動かし、巻いた強めのシュートでGKの右を抜いた。相手との間合いを制して決めたどちらのゴールも、「イメージを持ってプレー」していたことを感じさせるものだ。
「相手のことをよく見られるように」
「今のマリノスのサッカーでは、ウイングがペナルティエリアでボールを受けることが多いです」と仲川は平日の練習後に語った。プレーも見た目もシャープな27歳は、まっすぐに物を見ている。そして時折、人懐こい笑顔を見せる。
口数は多くなさそうだが、たぶんサッカーを話すことは嫌いじゃないだろう。
「そこで相手の重心やタイミングを見ながら、──実際に今は相手のことをよく見られるようになりました──瞬間的にコースを作ってシュートを打つようにしています。大学時代から得意なプレーでしたけど、今も日頃からその練習をしているので、それが少しずつ実ってきているのかな。
相手からすれば、そこでシュートを打たれるのが嫌だろうし、一度止められても誰かが詰めてくれることがあります。ペナルティエリアには、色んな可能性が詰まっているので、それを楽しみながらやっています。何かを起こそう、いや、何かを起こさなきゃ、と思いながら」