球体とリズムBACK NUMBER
今Jで最もホットな男はマリノスに。
仲川輝人の想像力と、異能の技術。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/11/16 11:30
小柄でもマリノスの中で誰より目立つ。仲川輝人をそろそろ代表の舞台でも見てみたい。
敵を抜ききらずに決める技術。
いかなるときも冷静に標的を見据え、そこに一撃を貫く、ボックス右のスナイパー。“敵を抜ききらずに打って決める”シュートやクロスは、元ポルトガル代表のフィーゴや、現ベルギー代表のケビン・デブライネらにも通じる一流の技術だ。
むろん、スピーディなドリブルで敵を抜き去り、そのままゴールまで陥れるスペクタクルなプレーも見せる。
チームが今季初の4連勝を遂げた直近の第31節北海道コンサドーレ札幌戦では、2-1で迎えた前半途中に横浜のカウンターが始まり、センターサークルでマテウスが止められると、追っていた仲川がボールを拾う。
瞬時にトップスピードに入った背番号23は、疾風のようなドリブルで相手全員を置き去りにし、GKまでかわして無人のゴールにシュートを沈めた。その19分前には、ボックス右からのダイレクトクロスでエリキの2点目をお膳立てしている。
PKなしで13得点8アシストの好成績。
これで今季リーグ戦では、30試合に出場して13得点8アシスト(データスタジアムより)。ゴール数は3位タイでアシスト数は2位タイながら、2つの合計では堂々の1位だ。しかも、得点ランキング10位以内でPKからのゴールがひとつもないのは、仲川だけだ。まぎれもなく、いま一番旬な攻撃者である。
川崎市出身のフロンターレ育ちは、もとより特大のポテンシャルを宿していたが、専修大学4年時にひざに重傷を負って長期離脱を強いられたこともあり、開花までに時間を要した。昨季開幕時までJ1でゴールはなく、町田ゼルビアやアビスパ福岡に半年間ずつ武者修行に出た時期もあった。
ところが昨年5月の磐田戦でPKからのこぼれ球を詰めて初得点を挙げると、「自信がついて焦りがなくなり」、シーズン合計9得点を記録。今季はすでにそれを大きく上回る数字を残しており、チームも個人もタイトルに手が届くところにいる。