プロ野球亭日乗BACK NUMBER
プレミア12、不調から復活の3安打!
坂本勇人が天敵の残影を振り切った。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2019/11/14 12:00
ついに長いスランプから抜け出した坂本。ヒットを放ち、井端弘和コーチとグータッチをする。
青柳は坂本にとって“天敵”。
場面は1点をリードされた3回無死一、二塁。ここでベンチから出されたサインは送りバントだったが、坂本の変調はこのバントから見えていた。
普段なら一発で決めるはずのバントを2度も失敗する。しかもボール1つを挟んだ4球目は青柳の外角に流れるスライダーに全くタイミングが合わず、何とかファウルにするのが精一杯だった。
そして最後はやはり外のスライダーに完全に形を崩されての投ゴロに倒れた。
バッターにとって苦手なだけではなく、対戦することでバッティングの形そのものを狂わされるような“天敵”がいるとすれば、青柳は坂本にとってまさにその“天敵”である。
青柳と対戦する以前のCS2試合では3安打2打点としっかり自分のタイミングでボールを捉えていた。右足にしっかり体重を乗せて、ボールを呼びこみ右軸で回転できていたのが、この対戦から体が前に出て崩れるようになってしまった。
修正する時間がない戦いが続いた。
シーズン中も青柳と対戦すると、その後はしばらくタイミングが狂って打撃の状態がおかしくなると嘆くことがあった。ただ、長いシーズンであれば、ある程度の打席を捨てて修正に専念できる時間はある。
しかし坂本を待っていたのはCSから日本シリーズ、そしてこの「プレミア12」と続いた短期決戦の連続だった。どの打席も結果を求められ、いくら状態が悪くても打席を捨てて修正する時間はない戦いが続いた。
「プレミア12」が始まってからも、何とか練習で自分のタイミングを取り戻そうと様々な努力を繰り返してきたが、肉体的な疲れも不調に拍車をかけて、そう簡単には元に戻らないままに打席に立ち続けてきていた。ずっと不振を引きずったままに打席に立ち続けてきた。
その結果が豪州戦のスタメン落ちであり、前日のアメリカ戦の3三振だったのである。