野球クロスロードBACK NUMBER
「下あごがガクガクと震えていた」
楽天・由規の復活と、後輩の戦力外。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2019/11/16 11:40
復帰登板となった9月26日の西武戦では、三振を奪うなど復調ぶりを見せた由規。
復活ではなく「しがみつく」。
「1年前は、またこの舞台に立てるなんて思ってもいなかったので。込み上げてくるものはありました」
地元の球団の象徴、クリムゾンレッドを基調としたユニフォームをその身にまとい、凱旋登板を果たした由規が、試合後、しみじみと想いを口にした。
右肩の故障によって幾度となく選手生命を脅かされ、戦力外となり土俵際に立たされてもなお、リスタートを実現させた。
人はそれを「復活」と言う。しかし、由規の認識は違う。
「この後どうなるか? 自分にもわからないです。どこまで野球を続けられるかわからないけど、投げられるうちはしがみついていきたいですね」
しがみつく。
由規のそれは、高純度の潔さだ。自分の体の状態を受け入れ、達観した末にようやくたどり着いた場所は、キラキラしていた。
生き様が照らされる。
楽天生命パーク宮城のセンターラインに、仙台育英出身者は自分しかいない。だが、ふたりの後輩、そして今年、戦力外となった全ての選手に、由規は確かに見せた。
世界は、ひとつじゃない――と。