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「下あごがガクガクと震えていた」
楽天・由規の復活と、後輩の戦力外。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2019/11/16 11:40
復帰登板となった9月26日の西武戦では、三振を奪うなど復調ぶりを見せた由規。
諦めなければ、リスタートはできる。
自分がそうだった。
プロ野球選手としての生死の境を知りながらも諦めず、今季、481日ぶりに一軍マウンドに立ち、その雄姿を故郷に焼き付けた。
新天地の楽天で見えたもの。それは、「諦めなければ、いつでもリスタートできる」という確信だった。
ヤクルト時代から右肩の怪我に悩まされてきた。3年目の2010年に当時の日本最速である161キロを叩き出した剛腕は、2011年を最後に一軍登板から遠ざかり、復帰するまで実に1771日もの歳月を費やした。
投手にとって肩とは命だ。
肘とは違い、一度メスを入れればパフォーマンスは著しく低下し、人によっては選手生命を大きく削られることにもなる。由規にしても、かつての剛速球は鳴りを潜め、18年の6月にはまたも右肩が悲鳴を上げた。
戦力外、キャッチボールも難しい状態。
10月。由規はヤクルトを戦力外となった。間もなくして楽天と育成選手として契約できたものの、この時点でキャッチボールすら満足にできないほどの状態だった。現在の橋本や西巻よりも不利な状況に直面していたわけだ。
その由規が、結果的に生き残った。
「実戦で投げられるかどうかわからないままシーズンに入って。でも、トレーナーとかいろんな人の支えがあって、リハビリを順調にできたことが大きかったですね」
由規は、そう私見を示す。
それ以上に彼を支えたのは達観だ。まず、右肩に関して言えば、由規は「一生付き合っていくものだ」と受け入れた。それでいながら、楽天に来てからは右肩を意識することを最小限に抑えたのである。