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「下あごがガクガクと震えていた」
楽天・由規の復活と、後輩の戦力外。
posted2019/11/16 11:40
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Kyodo News
「みんなプロの世界で勝負しているんで、しょうがないことだと思います。本人たちが一番わかっているんじゃないですか?」
――高校の後輩が戦力外になって、当然、悲しさはあると思うけど。
そう尋ねると、楽天の由規は少しだけ間を置き、冒頭のように述べた。
仙台育英時代の1学年下で、巨人を経て今季からともに楽天でプレーすることとなった橋本到。同校の後輩で今年が高卒2年目の西巻賢二が戦力外通告を受けたことについて、由規は冷静に言葉を選んだ(西巻はその後ロッテ入りが決定)。
ただ、それはあくまで、冷静を装っているように感じられた。
由規の表情を探れば、それは一目瞭然だった。「泣き虫王子」と呼ばれていた入団当初のように、すぐに涙腺が緩むことはない。ただ、遠くを見ながら気を紛らわし、本音を避けているようでもあった。
「やっぱり……寂しい」
だから、ややアプローチを変えて聞いた。
――プロとしてではなく、高校の先輩としての気持ちはどうか?
由規が衣を脱ぎ捨てる。
「地元の楽天のホームで、育英出身でセンターライン(投手・由規、遊撃・西巻、中堅・橋本)を組みたい」と、願望を掲げていた先輩が、大きく息を吸い込む。想いが、言葉となって湧出する。
「やっぱり……寂しい。特に、到は高校のひとつ下だし、同じタイミングで楽天に来て、地元仙台で、一軍で一緒にプレーしたい気持ちが強かったので。西巻とは年が離れているけど、高校の後輩だし気にはしていて。『まさか2年で』って本人も思っていると思うんですよ。
でも、ここで終わりじゃないんです。ふたりが次にどこでプレーするかわからないけど、新しいところに行ってから見えるものって必ずあるから。自分がそうだったんで。だから、やれることをやって、やれるところまで野球を続けてほしいですね」