ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
「人間の脆さを感じた1年でした」
DeNA梶谷隆幸、崖っぷちからの生還。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2019/11/10 11:00
2013年から'17年まで5年連続で2ケタ本塁打を記録してきた。ここ2年はそれぞれ出場41試合と苦しんでいる
気がつけば負のループ。
「人間って悪くなると粗を探すというか自分を正当化したくなるものですよね。自分の状況が悪いのは誰かのせいだったり、またあの時の当たりは正面をついてなければヒットだったのに、とか“たられば”ばかり探してしまう。
キャリア的にあと何年できるのかと考えることもあったし、どうしても弱いところが出てしまう。人間の脆さというのをすごく感じていましたね」
気がつけば負のループ。このまま朽ちてしまってもおかしくないときに、梶谷の尻を叩いたのが、昨年オフに結婚した妻だった。
「昔はああだった」と妻に愚痴ると……。
「家に帰ると、昔はああだった、こうだったって妻の前で愚痴ってたんですよ。そうしたら、過去なんてどうでもよくて今が大事。以前どれだけ打ってきたとしてもまったく意味はない、ということに気づかせてくれて……。
結局、愚痴を言っている人間は成長できないし、それを言っている時点でダメだなって。マイナスなことを思うたびに、いや違う、次にどういう行動をすればいいかと、考えるようになりましたね。
例えば、練習を以前はこれぐらいでいいやと思っていたのを、そうじゃないと考え直し、これまで以上に時間を割いたり、単純に言えばそういうことなんですけど“心の持ち方を変える”ということに取り組んできましたね」
梶谷は昨年から潜在能力を引き出すために心理療法を採り入れるなど、自らの改革に着手しており、それも徐々にプラスに働いていった。夏場にかけ確実に打撃は向上し、ファームでホームランを連発する。復調したかのように見えたが、それでも一軍からの朗報は届くことはなかった。