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大坂なおみの2019年は「U」だった!?
「去年より泣いたけど、教訓かな」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/10/31 12:00
肩の負傷でWTAファイナルズを棄権した大坂なおみ。それでも全豪制覇、世界ランク1位という2019年の実績は消えない。
「たくさん泣いたけど、教訓かな」
オフの間に治せると踏んでいるのだろう。加えて、シーズンを振り返って一定の手応えも感じている。そのせいだろうか、「本当に残念」な締めくくりになったにもかかわらず、会見での大坂の表情はそう絶望的ではなかった。
「意外にも、今は去年より今年のほうがいい年だったと感じている。去年よりたくさん泣いたけど、それも教訓かなって」
そう話し、今シーズンをアルファベットの「U」で表現した。はじめと終わりがよかったという意味だ。「U」のかたちの底の部分は、1回戦負けしたウィンブルドンを含めたヨーロッパのシーズンである。
「シーズンの終わりになると今年を振り返ってという質問をされるけど、いつも私の答えは同じで、1年を通してもっと安定した成績を残したかったということ。それはまた今回も同じです」
テニス選手としてもっと成長を。
2週間前に22歳になった。
日本では22歳以上の重国籍を認めておらず、重国籍者は誕生日までに1つを選択しなくてはならない。大坂は以前から希望していた通りに日本国籍を選び、これによって来年の東京オリンピックには、出場するなら間違いなく日本人として出場するということになった。
アメリカ国籍を離脱したかどうかのデリケートな部分を本人が詳しく語ることはこの先もないと思われるが、多くのファンや関係者の関心事だった<国籍問題>に一応の決着をつけたかたちだ。
その後、気持ちの変化はあったのだろうか。そんな質問に、「皆さんが望むような答えじゃないかも。だから本心を言うのはやめておくわ。なんてね(笑)」と冗談めかしてから、こう続けた。
「正直なところ何も変わっていません。それも問題なのかもしれないけど。ただ、今はテニスプレーヤーとしてもっと成長したい。ひたすらそのために自分のエネルギーを注いでいます」
大会に漂う空しさをまるで置き去りにして、大坂は颯爽とポジティブに来シーズンへと向かって行った。