スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
コールの下降とソトの大爆発。
「神話」が崩れたワールドシリーズ。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2019/10/26 08:00
23日のワールドシリーズ第1戦で、アストロズのコールから本塁打を放ったナショナルズの若き4番ソト(右)。
最上段まで届いたソトの一撃。
この翳りが、ワールドシリーズ第1戦で、黒々とした影に変化した。
主役は、21歳の誕生日を3日後に控えたホアン・ソトだった。4回表、ソトはコールが外角高目に投じた155キロのフォーシームを、左中間の奥深くに叩き込んだ。流し打ちなどではなく、パワーで反対方向に運ぶ、飛距離の長い豪快な一撃だった。外野席最上段を走る模型機関車のそばまで飛んだのだから、衝撃は大きい。
ソトは、5回表にもコールを砕いた。2死一三塁の好機に、左翼フェンス直撃の二塁打を放ち、ナショナルズに4点目と5点目をもたらしたのだ。結局、最終スコアは5対4。
このときは、あのコールがひるんでいた。絶大な自信をもって投げ込んだ速球を前の打席で本塁打されたのがよほどこたえたのか、ここでは初球から変化球の連投だった。スライダー、ナックルカーヴ、ナックルカーヴ、スライダー、チェンジアップ……そして打たれた6球目も、曲がらないスライダー。「大リーグ最強」と謳われたフォーシームでの勝負を、この場で避けるとは。
ホーム2連敗からの逆転Vは稀。
劣勢を予想されていたナショナルズは、初戦の勝利で大きなモメンタムを得た。しかも第2戦、彼らはゲーム終盤でヴァーランダーを打ち崩し(結果は12対3)、一気に優勢に立った。第3戦(ワールドシリーズがワシントンDCで開催されるのは1933年以来だ)で、調子が上向いてきた老練アニバル・サンチェスが好投すれば、勢いはさらに増すだろう。
2-3-2の開催フォーマットがワールドシリーズで採用されて以来、ホームで2連敗したチームが逆転優勝を果たした確率は、25ケース中3ケースと非常に低い。近年では、1996年のヤンキースがブレーヴスを相手に達成して以来、一度も起こっていない。ナショナルズとしては、一気呵成に勝負をつけたいところだろう。