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再び熱を帯びるフランクフルト。
熟練リベロ長谷部誠から始まる魔法。
text by
本田千尋Chihiro Honda
photograph byGetty Images
posted2019/10/24 11:40
ドイツ代表のホープ、ハフェルツ(中央)を押さえ込んだ長谷部誠。アグレッシブな守備で自由にプレーをさせなかった。
“魔法”が甦った試合。
後半に入ると、引き気味になったアイントラハトは、左右のウイングがワイドに張る3-4-3に布陣を変更したレバークーゼンに対して、少し後手に回るようになる。
68分、ケビン・フォラントが左から上げたクロス。長谷部とマルティン・ヒンターエッガーとの間でマークの受け渡しが上手くいかず、飛び込んできたルーカス・アラリオにフリーでヘディングシュートを打たれてしまう。しかし、GKフレデリック・レノウが好守を見せてピンチを凌ぐ。DF陣が一体となって体を張り、守備面でも「戦う姿勢」を見せたアイントラハト。終盤の80分には、バス・ドストが技ありのゴールで駄目を押す。終わってみれば、レバークーゼン相手に3-0での完勝だった。
序盤から火が点いたコンメルツバンク・アレナは、ヨーロッパリーグで快進撃を見せた昨季のように、燃えに燃えた。シャフタール・ドネツク、インテル・ミラノ、ベンフィカ……まるで“魔法”に掛けられたように、CLクラスの強豪を次々と撃破した勢いが、再び戻ってきたのだ。
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長谷部は「今日の試合は非常に大事だった」と言う。
「中断期間に入る直前の試合で、少し歯がゆいというか、ホームで最後に追い付かれてしまって……そこで中断明けの今日の試合は非常に大事だったし、これからのリーグ戦の相手を考えると、今日しっかり勝つことはチームにとって本当に大事だと思っていました。最終的な結果として、実際に勝つことができて非常に大きかったと思います」
2カ月ぶりの「失点0」に笑顔。
中断期間に入る直前の試合。
6日に行われたベルダー・ブレーメン戦で、長谷部は2-1で迎えた終盤にPKを献上してしまう。GKが弾いたボールに詰めるダビー・クラーセンへのスライディングタックルが、少し遅れて入ってしまった。掴みかけた勝ち点3は、指の間からこぼれ落ちる砂のように、目の前で消えていった。土壇場で2-2に追い付かれるという「少し歯がゆい」結果になった。
そしてこのブレーメン戦に限らず、今季のアイントラハトの守備はなかなか安定しなかった。何せブンデスリーガの試合で無失点に終えた勝利は、8月にホームで行われたTSGホッフェンハイムとの「開幕戦以来」、およそ2カ月ぶりのことなのだ。
ブレーメン戦の結果を払拭する勝利に、何より「守備の人間として」、長谷部は久々の「失点0」を喜んだ。これからのリーグ戦の相手は、次節が首位のボルシアMG、その次の節が昨季王者のバイエルン・ミュンヘンである。強豪との2連戦に臨む上で、安定した守備が欠かせないのは言うまでもない。
「開幕戦以来の無失点なので、そういう意味では、守備の人間として失点0は嬉しいです。GKもね、今日は非常にチームを助けてくれたので、チャンスを作られたところは反省して詰めていかないといけないですけど、結果として0で抑えられたことは、すごくポジティブなところですね」