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アイスW杯で「サラリーマン世界一」。
異色クライマー・門田ギハードとは? 

text by

森山憲一

森山憲一Kenichi Moriyama

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photograph byKenichi Moriyama

posted2019/10/20 08:00

アイスW杯で「サラリーマン世界一」。異色クライマー・門田ギハードとは?<Number Web> photograph by Kenichi Moriyama

アイスクライミングW杯で決勝に進出した門田ギハード。練習施設は牛舎を改造した“アイス専用”道場だ

ヨセミテに衝撃を受け、道具を衝動買い。

 その後にアメリカ旅行で立ち寄ったヨセミテ渓谷。高さ1000メートル級の大岩壁が立ち並ぶこの渓谷は、世界のロッククライミングの聖地となっている。

 その巨大な風景と、そこを登るクライマーの存在に衝撃を受けた門田は、現地で衝動的にクライミング道具を買って帰国。早速クライミングを始めた。

 その後、2年ほどはレジャーレベルでクライミングを楽しんでいたが、あるとき、スイスで開催されたアイスクライミング・ワールドカップの写真を見る機会があった。これが門田の運命を変える。

「なんてクレイジーな競技なんだ! めちゃくちゃカッコいい!」

 一枚の写真から電流のようなショックを受けた門田。すぐさま、これを目指すことを心に決めた。

 このときの門田のレベルは、スポーツクライミングで5.10~5.11、アイスクライミングは八ヶ岳で数回経験したことがある程度。これはどこにでもいる初中級クライマーのレベルで、ワールドカップ出場など考えもしないのが普通である。

 その門田にアドバイスを請われたアイスクライミング・ワールドカップの経験者が呆れたというのも無理はない。

異常な速度で上達し、2016年にW杯初出場。

「もちろん、自分のレベルでワールドカップなんてありえないと自覚はしていました。だから、やれることは全部やろうと決めて、週7日、毎日クライミングジムに通ってトレーニングしました。夜中はアックスを持ってひたすら懸垂。レストなんかしてる場合じゃないなと」

 門田は3カ月でクライミングレベルを5.13(上級)まで一気に引き上げた。この急速なレベルアップは異例であり、少なくとも、会社員として仕事をしながらこの猛スピードの成長を遂げた例はほとんど聞いたことがない。

 ワールドカップに出ると決めたときから半年後、2016年1月に門田はワールドカップに初出場。36位で予選落ちに終わったが、モチベーションは下がるどころかさらに燃えさかり、2017年は全6戦にフル出場して最高順位21位を記録した。

 以降も順位は右肩上がり。2018年には17位、そして今年2019年シーズン、ついに8位を記録。8年ぶりの日本人決勝進出者となった。

【次ページ】 ふだんは会社員、実は花形部署。

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