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アイスW杯で「サラリーマン世界一」。
異色クライマー・門田ギハードとは? 

text by

森山憲一

森山憲一Kenichi Moriyama

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photograph byKenichi Moriyama

posted2019/10/20 08:00

アイスW杯で「サラリーマン世界一」。異色クライマー・門田ギハードとは?<Number Web> photograph by Kenichi Moriyama

アイスクライミングW杯で決勝に進出した門田ギハード。練習施設は牛舎を改造した“アイス専用”道場だ

遅く始めた門田には時間がない。

 現在の門田の目標は、もちろんワールドカップでの優勝。とくに、アイスクライミングを始めたきっかけとなった、スイス・サースフェーの会場で優勝することが夢だ。

「でも、世界のトップに近づけば近づくほど、むしろ遠ざかってしまうような感覚に襲われています。自分のレベルが上がるにつれて、トップ選手にあって僕にないものが具体的に見えてくるんですよね。うまくなればなるほど、やるべきことが増えていくようで、休んでいられないんです」

 クライミングを始めたのが遅かった門田は、自分に残された時間が多くないこともわかっている。肉体的な下り坂を迎える前に、世界のトップ層に追いつかなければいけないのだ。

 仕事とトレーニングの時間配分に苦労する毎日に、「少しでも会社がバックアップしてくれるとうれしいんですが……」と本音も漏らす。

2022年の北京冬季五輪の可能性。

 もうひとつ、秘めたる夢もある。2022年に北京で開かれる冬季五輪に出場することだ。

 スポーツクライミングと同じく、アイスクライミングもオリンピック競技化を目指す動きがある。すでに2014年のソチ五輪では、公式のデモンストレーションとしてアイスクライミングが行われた。北京五輪でもデモイベントが開催される可能性がある。門田は日本代表としてそこに出て、アイスクライミングの魅力をアピールしたいのだという。

 そこを見すえて、ビジネスマンらしい逆算思考ですでに計画を練っている。

「北京で日本代表に選ばれるには、その前年、つまり来年2021年シーズンにワールドカップで結果を出しておく必要があります。だから勝負の年は来シーズン。今シーズンはワールドカップ出場は重要な大会だけに抑えて、資金と有給を貯めておきます。今シーズンは、自分に足りない能力をつけるためのトレーニングに集中ですね」

 この10月には、強豪選手が集まる韓国に出かけて、トレーニング合宿に参加する。猛トレーニングの成果が、次のワールドカップでどんな結果として現れてくるか。今から楽しみだ。

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