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「自分にむかつく」負けず嫌いの塊。
カープ期待の20歳右腕、遠藤淳志。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2019/10/16 11:40

「自分にむかつく」負けず嫌いの塊。カープ期待の20歳右腕、遠藤淳志。<Number Web> photograph by Kyodo News

霞ヶ浦高から2018年にドラフト5位でカープ入団。今季は34試合に登板して1勝1敗、防御率3.16だった。

日々の練習へと突き動かす原動力とは?

 目的地が明確だからこそ、自分に足りないものも分かる。どれだけ成長しなければいけないかも分かる。それ故、悔しさを感じ、挫折を味わう。ときには劣等感すら感じるかも知れない。そういった感情が日々の練習へと突き動かす原動力となる。

 遠藤は一昨年のドラフトで広島から5位で指名された。1位は2球団競合の末、広島入りした広陵の中村奨成。入団時は知名度も注目度も、立場もまったく違った。

 ただ、新人合同自主トレから一定の評価を受けていた。力が抜けた無駄のないテークバックからのフォームや身のこなしに「おもしろい」という関係者は少なくなかった。

 1年目は実戦が続く二軍ではなく、強化の位置づけとなる“三軍”で夏場まで鍛える広島流の指導法で、基礎体力強化や基礎練習の反復をしながらも、目的地は下方修正しなかった。

球に怒りを乗せるように。

 ケガの影響で秋季キャンプに参加できず、今年の春季キャンプは二軍スタートとなった。一方で同期で同学年、プライベートでも仲がいい山口翔は一軍スタート。生粋の負けず嫌いが燃えないわけがない。「キャンプ中の一軍合流を狙っている。開幕一軍も諦めたわけじゃない」。表情は穏やかだったが、目は真っすぐ前を向いていた。

 有言実行で、春季キャンプ第3クールに一軍合流。紅白戦で1回無安打無失点と結果を残した。だが、一軍が沖縄へ移動した日、遠藤は二軍キャンプ地日南東光寺球場にいた。帯同させられる枠の問題もあり、同行することはできなかった。

 二軍キャンプでシート打撃に登板したまだ19歳だった右腕は球に怒りを乗せたように捕手のミット音を響かせていた。キャンプ中のふるい落としは当然であり、一軍経験者の若い選手が二軍降格となるケースもよく見られる。そのときの表情はさまざま。すぐに受け入れる若手もいれば、遠藤のように悔しさを練習に向ける選手もいる。一軍に早期に上がるタイプは当然、後者だ。

【次ページ】 悔しさは、人を強くする。

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