相手の状態や心理を読み切る。

　鈴木には足があり、相手捕手の肩はそれほど強くなかった。

　何よりあとアウト1つになっていたので相手バッテリーが打席の打者に集中して、走者への警戒心が薄くなっていた。

　それを読み切って貢監督は決断した。

　それが原の語る「理」だったのである。

意表をついたダブルスチール。

　セ・リーグのクライマックスシリーズ（CS）ファイナルステージ第2戦は、1位の巨人が3位の阪神を6対0と圧倒して日本シリーズ進出へ王手をかけた。

　初回に1番・亀井善行外野手の二塁打と2番・坂本勇人内野手の連打で一、三塁として併殺の間に1点を先行すると、4回には5番に起用したアレックス・ゲレーロ外野手の2ランで追加点と終始、主導権を握っての快勝劇。

　ただ、王手をかけた巨人にとってシリーズの分かれ目となりそうなのが、阪神・矢野燿大監督はもとより東京ドームにいたほとんどの人々の意表をついたダブルスチールの成功だっただろう。

　場面は5回だ。

　1死から亀井がこの試合2本目の二塁打を右中間に放って、2番の坂本が歩いた一、二塁。3番・丸佳浩外野手の初球に亀井と坂本が走った。2人が動いた瞬間に東京ドームにはどよめきが響き、楽々と重盗は成功した。

　そして3球目を丸が左翼に打ち上げる犠飛、続く岡本和真内野手の右前適時打で勝負を決める2点が追加された。

「まあチャンスがあったというところで、それを見逃さなかったというところですね」

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