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西澤健太は新人記録を塗り替える?
新エースを突き動かすエスパルス愛。
text by
望月文夫Fumio Mochizuki
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/10/11 11:00
第28節終了時点で7得点。あと1ゴールで藤本淳吾(京都)がマークしたルーキーイヤーのクラブ最多得点記録に並ぶ。
「自分もあのピッチに早く立ちたい」
前向きな姿勢を維持できる理由もあった。
高校卒業時、ユースの同期だったFW北川航也(現SKラピード・ウィーン/オーストリア)、MF宮本航汰(現J2FC岐阜)、DF水谷拓磨の3選手はそのままトップチームに昇格した。しかし、西澤の名前はそこにはなかった。
大学時代はプロで活躍する同期の姿を見ながら、改めて卒業後にエスパルスでプレーすることを希望してきた。変わらぬ“エスパルス愛”を実らせると、入団後はすでに活躍していた北川らの姿に「自分もあのピッチに早く立ちたい」という強い思いを抱き続けてきた。
チャンスが巡ってきたのは第12節の大分トリニータ戦である。前節でリーグ2連覇中の川崎フロンターレに0−4とホームで大敗し、公式戦4連敗となったところで指揮官が交代。コーチから昇格した篠田善之監督が初めて指揮を執ったその試合の終盤、左MFとしてリーグ戦初出場を果たした。そこからは交代要員として立て続けに試合に出場しながら、徐々に評価を高めていった。
チャンスを生かし、スタメンに定着。
そして、飛躍のきっかけとなったのがホーム・アイスタ日本平での第15節、横浜F・マリノス戦だった。
後半から投入された西澤は、2−2で迎えたアディショナルタイム、DFエウシーニョからの裏スペースへのパスに反応し、土壇場の決勝点で勝点3に貢献した。大歓声に包まれたスタンドに向け、ヒーローインタビューでは「最高で〜す!」と雄叫びを上げた。加入してからの苦闘の日々を払拭するような気持のいい笑顔だった。
その次の名古屋グランパス戦では、ついに初めてスターティングメンバーに名を連ねた。チームは先制点を奪い、そのまま逃げ切れるかと思われたが、後半アディショナルタイム1分に同点に追いつかれた。引き分けが濃厚なムード。だが、同5分にまたしても劇的弾を押し込み、そこからはスタメンに定着した。
第21節、横浜F・マリノス戦で再び決勝弾を決めるなど、西澤の活躍とともにチームも一時の最下位から中位まで浮上してきた。