「みんなで獲った勝ち点だし」

　そして、ドイツ人であるトルステン・フィンク監督にとっても、自身のサッカーを浸透させるうえで酒井の存在は大きい。また、ピッチ内で外国人選手と日本人選手を繋ぐ役割も酒井が担っている。

　良質な選手、良質な監督が揃っていてもチームにはならない。酒井の加入は、個だけではどうしようもないサッカーというスポーツの本質を示しているように思える。

「自分のプレーが勝利に繋がっているとは思わない。みんなで獲った勝ち点だし、それを続けてやっていきたい。確かにドイツでは連勝はほとんどなかったので、気持ちよくサッカーができています。でも当時と同じように、もっとよくなる、もっとよくする、というスタンスは変わらない。

『今日のような試合を2－0でしっかり終われるチームになるためには』って考えなくちゃいけない。来年、再来年、優勝争いやACLを戦うチームになるためにはそういうところがキーポイントになってくるから。ゼロで終わらせられるチームになることが、そこへの一歩になると思っています」

　復帰したJリーグで酒井は快調なスタートを切った。

　しかし、ずっと平坦で歩きやすい道が続くわけではないだろう。そういうときこそ、真価が問われる。チームを改善させること、その土台を盤石なものに固めることは、困難な状況を回避したり、傷を浅くするために必要なことだ。だから、結果が出ているときほど、足元を見つめるべきなのだろう。

　充実感を漂わせる酒井の姿は、彼自身の新しい挑戦へ大きな期待を抱かせた。