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オールカマーの逃走劇を天皇賞でも。
スティッフェリオと丸山に漂う魅力。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2019/09/25 07:00
スティッフェリオはこれまで23戦し、掲示板を外したのはわずか5戦という安定感も魅力である。
スローペースからまんまと逃げ切り。
3番人気はミッキースワロー(牡5歳、美浦・菊沢隆徳厩舎)。3歳時にはセントライト記念(GII)を優勝。続く菊花賞(GI)では3番人気に推されるなど、その末脚には定評があった。しかし、展開に左右されがちな追い込み脚質という事もあり、なかなか勝ち上がれなかった。
ところが前走の七夕賞(GIII)を見事に優勝。本格化を思わせるレースぶりだった上に、2頭のGIホースが休み明けなのに対しこちらは順調に使われている身という事もあり、3番人気。単勝は4.9倍だった。
上位の人気争いをしたのはこの3頭まで。4番人気馬は単勝11.2倍とオッズ的には少々離される数字となったが、虎視眈々と逆転を狙っていた。その馬が、すなわちスティッフェリオ(牡5歳、栗東・音無秀孝厩舎)である。
前半の1000メートルを61秒8というスローペースに持ち込んで逃げた同馬は、後半の半マイルを全て11秒台のラップでまとめる。いわゆるスローの逃げで掴んだ位置的なアドバンテージを生かして、まんまと逃げ切ってみせたのだ。
丸山が「考えていた通りの競馬」。
「僕が指示したわけではありません。でも、ジョッキーがこの馬を完全に手の内に入れているので、作戦を立ててその通りに上手に乗ってくれました」
レース後にそう語ったのは管理する音無調教師だ。この言葉からも分かるように“逃げ”の作戦は手綱をとった丸山元気騎手の作戦だったわけだ。
「すごく素直で乗りやすい馬なので、考えていた通りの競馬ができました」
“してやったり”の手綱捌きに、ゴールでは右手でガッツポーズを作った丸山騎手は、そう述べた。
先述した3頭の人気馬はいずれも差して良いタイプ。レイデオロやウインブライトはある程度、前でも競馬を出来るが、それでも最後の直線の脚に懸けるタイプである事には違いない。ミッキースワローに関しては先に紹介した通り末脚勝負タイプ。いわゆる追い込み馬だ。