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ジブラルタルで生きる日本人選手。
欧州の端っこからCLを目指して。 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byShohei Tsurumi

posted2019/09/15 19:00

ジブラルタルで生きる日本人選手。欧州の端っこからCLを目指して。<Number Web> photograph by Shohei Tsurumi

サッカー選手のキャリアの形はどんどん複数化している。鶴見昌平の歩く道も、また新たな地平を切り開いている。

リーグのレベルはほぼJ1クラス?

 8月14日開幕戦のライオンズ・ジブラルタルFC戦で鶴見は公式戦デビュー(0-0)を果たした。つづくリンクスFC戦(0-5)にもスタメン出場している。

 では、ジブラルタルリーグとは、どんなリーグなのか。

「イギリス領なので、プレミアリーグの下部みたいな感じで全体的にプレーはけっこう荒いです。かなりガッツリきますし、ラフプレーも多い。テクニカルというよりはフィジカル面が強いサッカーをしています」

 リーグ戦は昨季までは8チームずつの2部制だったが、今シーズンからプレミアディビジョンリーグに統合され、16チームになった。12月までホーム&アウェイで戦い、上位8チームと下位8チームに分かれる。

 そこからさらにホーム&アウェイを戦い上位8チームの優勝チームにはチャンピオンズリーグの予備予選出場権、2位とカップ戦優勝チームには欧州リーグの予選の出場権が与えられる。

 レベルは、鶴見曰く「スペイン2部B(スペイン3部相当)」ということだ。実は昨年、湘南ベルマーレがジブラルタルに遠征し、リンカーン・レッド・リンプスと練習試合をしている。その際は1-1で引き分けた。本番の試合ではないので何とも言えないが、J1リーグのチームとほぼ互角に戦えるレベルにあることは間違いない。

スタジアムは1つ、ほぼ毎日試合。

 試合は、ヴィクトリアスタジアム(収容人数2000人)で開催される。

 ジブラルタル空港のすぐ横にあり、エリア内唯一で、人工芝のスタジアムだ。ジブラルタルにはこのスタジアムしかなく、U-23のリーグもあるのでシーズン中はほぼ毎日、1試合から2試合が開催されている。

「いちおうホーム&アウェイで各チームと2試合を戦うことになっているんですが、あまりホーム感とかないですね。リンカーンとか歴史があるチームはサポーターがいますが、僕のチームは新しいので、まだまだ少ないです」

 ちなみにリンカーンは、24回の優勝を誇るリーグきっての強豪クラブだ。

 1チーム約25名の選手が在籍しており、リーグの規則として試合で4人のジブラルタル人をプレーさせないといけないことになっている。1人でも欠けると勝ち点3を失うことになるので、7~8人のジブラルタル人選手が常時いる。チームの浮沈を握るのは、このジブラルタルの選手たちだという。

「資金力があるリンカーンとかはジブラルタル代表の選手を多く獲得し、そこにスペインの2部や1部の経験のある選手を絡ませている。ジブラルタルの選手人口はそんなに多くないので、その選手の質の差が戦力の差になっている感がありますね」

 鶴見の所属するエウロパ・ポイントFCには、ジブラルタル人とスペイン人の他にイギリス人、アイルランド人、そしてアジア系の選手もいる。20代前半の若い選手が多いが、30歳の鶴見の他に35歳のスペイン人選手がおり、若手とベテランが融合したチームになっている。

【次ページ】 選手の年俸は決して高くない。

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#鶴見昌平

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