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不屈の男・ヤクルト館山昌平が引退。
右肘手術前に明かした丸刈りの理由。
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byKYODO
posted2019/09/10 11:45
今季、唯一の一軍での登板となった、6月12日の楽天戦でのヤクルト・館山。
「引っかかったのではなく、引っかけにいった」
ピッチングに関しても自らの1球1球について、克明に解説してくれるタイプ。インタビューで対峙すると、その言葉は非常に深く、聞きごたえがあった。こちらの質問に対して、自分の考えとは異なる部分は「違う」とはっきりと言ってくれる。最後はいつも納得させられた。
「あの1球は右打者への外角へのボールが大きく外に逸れた。引っかかった?」
「引っかかったのではなく、引っかけにいった。そんな感覚。インコースに抜け気味のツーシームを試合中に矯正する為の方法として、一度外に引っ掛けるような感覚で投げてツーシームの感覚を元に戻そうと思って投げたボールだったんだよ」
その試合の実況で、僕は「館山のボールが引っかかって大きく外に外れました」と伝えていた。しかし振り返ると、確かにその後、館山は右バッターをインコース気味のボールで打ち取り、内野ゴロの山を築いていた。
自分のピッチングについて語る館山の話の面白さは、まるで読みごたえのある書物の読後感のようだった。
神奈川県の高校野球界を熱狂の渦に。
先日、二軍戦で現役としては最後の登板を終えた38歳の館山は「穏やかな気持ちだった」と試合後に話した。
いまから21年前、日大藤沢高校のエースとして、横浜高校の松坂大輔らと死闘を演じ、神奈川県の高校野球界を熱狂の渦に巻き込んだ。
「甲子園での思い出は?」と聞くと、「春の選抜での甲子園練習かな。ベンチから控えの選手たちの動きを見ているのが何よりも嬉しかった」と答えた。
どういう意味か?