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長谷部誠の統率力は今季も健在。
試合直後も、さすがの“神対応”!
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/09/01 11:30
開幕戦から健在ぶりを見せつけた長谷部誠。戦力がやや不安なチームを今季も牽引していく。
記者席から見たプロポーズ。
リーガの開幕戦は、そのシーズンの幕開けを告げるイベントでもあって、サポーターの方々の高揚感をひしひしと感じます。
例えば、スタジアムに併設されたファンショップは長蛇の列。普段はすんなり店内へ入れるのに、この日は入場規制が行われていて、入口に立つ係員さんが忙しく動線を整理していました。チームグッズの一番人気は断然レプリカユニホーム、次はクラブマフラーだそうですが、スタンドの椅子に敷くクッションも人気とのことで、アイントラハトのクッショングッズは手で持ち運びやすいようにバッグ型の形状をしています。
アイントラハトの記者席はメインスタンドの一番上にあって、階段を幾段も昇って辿り着かねばなりません。ただ、コンメルツバンク・アレナはスタンドの頂上でもピッチまでの距離が近く感じ、臨場感は十分得られます。
試合1時間前、記者席から眼下のスタンド入口付近を見ると、男性が女性にひざまずき、何かを掲げています。
目を凝らすと男性の手には瀟洒な小箱に入った指輪が。それを見た彼女が顔を覆って肩を震わせると、2人を祝福する指笛と拍手が盛大に沸き起こりました。他人のプロポーズシーンを目撃したのは人生で初めて。でも、男性が嬉し涙に暮れる彼女を優しく抱き寄せた瞬間、スタジアムの屋根の隙間から太陽の光が射し込み彼らを明るく照らしたのを見て、僕も勝手に感慨に浸ってしまいました。
先制点にサポーターは沸き立つも……。
ホッフェンハイムとの開幕戦は、開始直後にヒンターエッガーが豪快なボレーで先制し狂喜乱舞。アナウンスの「アイントラハト!」という掛け声にサポーターが「アイン!(1点!)」と応える声量はいつもより大きく、続いて「ホッフェンハイム!」に「ヌル!(0点!)」と叫ぶ儀式もお約束。ちなみにホームチームのサポーターはアウェーチームに何点取られようが、「ヌル!」と言い切ります。
ただ、この日のアイントラハトは少々お疲れの様子。
先述したようにブンデスリーガの開幕前にEL2次予選、3次予選を戦っていて、この試合の3日前にはリヒテンシュタインのFCファドーツと一戦を交えていたのです。
昨季のアイントラハトはリーガとELで躍進して、リーガ4位以内でのチャンピオンズリーグ出場権獲得、ELでは悲願の優勝へ向けて邁進していました。しかし、両タイトルで好成績を収めるに十分な選手層がなく、主力の疲労が顕著となりシーズン終盤に大失速。結局リーガは7位、ELは準決勝敗退に終わりました。
ただでさえ少数精鋭で厳しい戦いを凌いできたチームなのに、今季のアイントラハトはヨビッチ、アレという攻撃の2枚看板を失った状況でのスタート。そして今季はEL予選からの出場となったことで、シーズン開幕から過密日程に晒されているのです。