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長谷部誠の統率力は今季も健在。
試合直後も、さすがの“神対応”!
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/09/01 11:30
開幕戦から健在ぶりを見せつけた長谷部誠。戦力がやや不安なチームを今季も牽引していく。
“長谷部大明神”に拍手喝采。
先制したアイントラハトは一転、防戦一方に。先発した鎌田はシャドーポジションで大奮闘するもゴールを奪えず、頼みのレビッチは明らかにコンディション不良を隠せません。コスティッチが独力打開で相手ゴール前まで持ち込み左足シュートを放つも、精度を欠き枠外。鎌田と同じくシャドーで先発したミヤト・ガチノビッチはボールロストの連続で、サポーターからもブーイングを浴びてしまう始末……。
最終ラインは幾度もピンチに直面。キャプテンの右ストッパー、ダビド・アブラアムは息も切れ切れ。殊勲の先制ゴールを挙げた左ストッパーのヒンターエッガーでさえも軽く相手にかわされて大ピンチを迎えるなど、絶体絶命の危機に立たされました。
そんなとき頼れるのは、やはり背番号20。リベロとしてチーム全体を統率する長谷部は、研ぎ澄まされた危機察知能力で相手よりも一歩先んじてタックル、スライディング、パスカット、ボール奪取と、敵の攻撃の芽を摘んでいきます。安心安全、明朗快活。“長谷部大明神”が醸す抜群の安定感に心を掴まれたサポーターが拍手喝采の嵐を浴びせた時点で、試合の趨勢は決しました。
アイントラハト「アイン!」、ホッフェンハイム「ヌル!」。正真正銘の1-0で、ホームチームがブンデスリーガの開幕戦を見事勝利で締めたのです。
さすが、心が整っていらっしゃる。
試合後。テレビインタビューに懇切丁寧に応える鎌田の脇で、何やら長谷部がその場を仕切っております。どうやら長谷部はドーピング検査の対象として指名されたとのこと。通常、メディア取材は受けずすぐさまドーピングルームへ向かうところですが、気遣いに溢れる彼はメディアを集め、「すぐにやってしまいましょう!」と応対してくれたのです。さすが、心が整っていらっしゃる。
その冷静沈着で聡明な態度を目の当たりにした僕は、改めて長谷部誠というプレーヤーの魅力を再確認したのでした。