プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「右脇に女性を抱くように待て!」
巨人・ゲレーロを復活させた名伯楽。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2019/08/30 15:40
8月24日のDeNA戦で勝ち越し2ランを放ち、ナインに迎えられるゲレーロ。
興が乗れば1時間でも打ち続ける。
「暑い国の人だからダラダラと練習させられるのは多分、嫌いなんだ。いつも冗談を言いながら『こんな練習もあるよ』『こういう打ち方もあるよ』と教えるようにしていた」
内田コーチはこう語るが、実は興が乗れば1時間でも打ち続ける。そういう真面目さを持つところもキューバ出身の選手の特長で、ゲレーロも、またその1人なのである。このファームでの1カ月の間に内田コーチという良き“修理屋さん”の言葉に真剣に耳を傾け、本来のパワーを生かせる打撃の形を身につけることができた。
それがいまの活躍の背景だった。
オープン戦のときに守備での怠慢プレーを指摘されてふてくされた態度を見せたことで、原監督の逆鱗に触れた。しかしその後は守りでもボールに積極的にチャージする姿に変わり、走塁でも一塁への全力疾走を怠らない。
今年の巨人の強さの秘密。
変化はグラウンドだけでなく生活面でも見えている。昨年はファームに落ちると都内の自宅からタクシーで神奈川県川崎市のジャイアンツ球場まで通っていたが、それを電車通勤に変えた。球団職員と一緒に地下鉄と電車を乗り継いで1時間近く。6月19日に2度目のファーム落ちをした後も、そうして電車でグラウンドに通い、名伯楽とマンツーマンで再昇格への準備を続けてきたのである。
「みなさん、ジャイアンツ球場に行く機会があったら、代わりに(内田コーチに)お礼を言っておいてください」
試合後の取材で担当記者を見回してゲレーロはこう語り、そして原監督もこんなことを言っていた。
「ビヤヌエバももうすぐ準備ができてくると聞いているよ」
名伯楽もいるファームが再生の場としても機能していることが、今年の巨人の強さの秘密でもある。