プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「右脇に女性を抱くように待て!」
巨人・ゲレーロを復活させた名伯楽。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2019/08/30 15:40
8月24日のDeNA戦で勝ち越し2ランを放ち、ナインに迎えられるゲレーロ。
原監督が絶賛した。
「それができるようになったのならいけるよ!」
7月26日の東京ドーム。阪神戦の試合前の練習で巨人・原辰徳監督がこう叫んだという。
視線の先ではこの日、約1カ月ぶりに二軍から復帰したアレックス・ゲレーロ外野手がフリー打撃を行っていた。
その打撃を原監督が絶賛したのである。
「ゲレーロの欠点はとにかくボールを打ちに行って前に出てしまうこと。しっかりと後ろ足にウエイトを残して、ボールを見定めることができないからボール球に手を出すし、打ち損じも多い。でもファームから上がってきて練習を見たら見違えていた。ピタッとワンピースでボールを待ってスイングできるようになっていた。いまのゲレーロの活躍の技術的な裏付けはそこにあると思うよ」
監督の見立て通りに本塁打を放った。
監督の見立て通りに28日の阪神戦で本塁打を放つと、8月9日からのヤクルト3連戦では10打数7安打4本塁打で9打点の大活躍でツバメスイープの原動力なった。その後も8月12日の広島戦でアドゥワ誠投手から2ラン、8月24日のDeNA戦でも石田健大投手から2ランと優勝争いの中で価値ある活躍を見せている。
そしてこの活躍の背景には1人のベテランコーチ、名伯楽の存在があったのである。
「右脇に女性を抱くようにボールを待て!」
二軍で内田順三巡回打撃コーチがゲレーロにかけた言葉である。
せわしなくグリップを動かし、絶えず動いて構えに落ち着きがないから、ボールを迎えにいってしまう。そのせわしなさを落ち着かせるために、まず内田コーチがラテン系のこの男に説いたのは、まさに優しく女性を抱きかかえる落ち着きだったのである。
そしてそこからステップを柔らかく踏み出すこと、右ひじを絞ってバットをインサイドから出して逆方向に打つこと、そのためにネットの近くに立たせて、そのネットにバットが触れないようにスイングする練習を繰り返させた。技術的なアドバイスと指導もしっかりと送り、その克服に取り組ませたのだ。