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イタリアで育った怪物の現在地。
森本貴幸は“消えた天才”ではない。
text by
寺島史彦(Number編集部)Fumihiko Terashima
photograph byYoshikazu Shiraki
posted2019/08/29 12:00
試合翌日にもかかわらず、森本は終始笑顔でカターニャでの日々を振り返ってくれた。
親友もいる、第2の故郷になった街。
現地のテレビ番組では時折、当時を懐かしむように森本が紹介されることもあるという。
「カターニャには本当に親友と呼べる存在もいて、日本でやった結婚式にも呼びましたし、当時のチームメイトともたまに連絡をとりあっています。当時のプリマヴェーラのキャプテンは、今もカターニャでプレーしています。僕にとってはもう、あそこは第2の故郷。今、子供が3人いるんですけど、いつか子供たちを連れていきたいです。『ここが俺がやってたところだよ』って」
現在、森本はJ2のアビスパ福岡でプレーしている。取材前日に行われた天皇杯、清水エスパルス戦はフル出場したものの、ゴールは奪えなかった。機会に恵まれずとも、フリーランを繰り返し、決定的なパスに備える。すべてはゴールのために。
かつてのように、森本の動向にメディアが騒ぐ時代は過ぎたかもしれない。「育成失敗」と時に囁かれることもあるかもしれない。しかし森本が惑わされることは、もうない。
目の前の試合でゴールを挙げることがすべて。セリエAの屈強なディフェンダーを相手にした毎日は、森本をすっかり笑顔の似合う大人にしていた。
Number985号「久保建英 18歳の冒険。」の「森本貴幸『カルチョの毎日がぼくを大人にした』」では、熊崎敬さんによる森本貴幸のカターニャ時代を振り返るインタビューが掲載されています。ぜひご覧ください。