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ジャマイカが恐れた18歳の小野伸二。
智将が今明かすフランスW杯秘話。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2019/09/01 11:50
18歳にしてジャマイカ戦でW杯初出場を果たした小野伸二。その才能は敵将も脅威に感じていた。
中田英寿を徹底的に抑え込もう。
――その結果、わかったことは?
「日本人は、目上の人間から指示されたことを完璧にやり遂げようとする。その反面、指示通りのことができないと責任を感じ、ひどく落ち込む。また、想定外の出来事に対処するのが不得意だ」
――そのことを、日本代表との対戦でどう生かそうと考えたのですか?
「こちらが特別なプレーをして勝とうと思わなくていい。日本の選手に精神的な圧力をかけ、ミスを誘発するのが勝利への近道と考えた」
――日本代表のキーマンは誰だと考えていたのですか?
「中田英寿。高い技術を持ち、フィジカルコンタクトにも強く、状況判断が素晴らしい。よく考え、状況に応じてベストのプレーを選択し、それを実行する。しかも、他の日本選手と違ってミスをすることを恐れない。特別な選手だった。彼にボールが渡ると、我々は必ずピンチを迎える。だから、彼をマークする以前に、彼にボールを送り届けるボランチの選手などを徹底的に抑え込もうとした」
小野にシュートを放たれて驚愕した。
――アジア予選序盤に活躍したカズ(三浦知良)が、W杯直前にチームから外れました。このことをどう思いましたか?
「故障もあってベストの状態でなかったのだろうが、彼の国際経験とリーダーシップは当時の日本代表にとって貴重だったはず。彼がメンバーから外れたのは、我々にとって幸いだった」
――ジャマイカ戦で後半途中から出場した、当時18歳の小野伸二については?
「才能豊かな選手であることは、事前のスカウティングでよくわかっていた。しかし、実際に対戦したときの彼は、短期間にさらなる成長を遂げていた。ピッチに立った直後、股抜きで1人かわし、さらにもう1人を外してシュートを放ったのを見て、驚愕した。その後も、大舞台で全く物怖じせず、我々にとって危険なプレーを繰り返していた。とてつもない能力を秘めた選手だった」