プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ダービー加入決定のルーニー。
「天才」の最後の雄姿を見逃すな!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto Press
posted2019/08/22 08:00
入団会見でフィリップ・コクー監督(左)と握手をかわすルーニー。
ギャンブル業界の広告塔?
ところが、イングランドの人々は、どこかルーニーには手厳しい。
17歳での代表デビュー当時は「イングランドの至宝」と呼ぶほど期待しておきながら、国際大会で栄冠をもたらせなかったことへのわだかまりがあるのか?
すでに代表からの引退を発表した後だった昨年11月、イングランド歴代得点王への表敬としてアメリカとの親善試合で再招集された際には、巷で「代表選手枠の無駄遣い」との声が聞かれた。そして今回は「金の無駄遣い」や「依存症」など、悪影響や危険性も指摘されるギャンブル業界の「広告塔」のようにも言われている。ダービー移籍の裏にクラブのメインスポンサーであるオンライン・カジノ『32レッド』社の存在があるためだ。
スポンサーなしで6億円台の年俸は無理だが……。
確かにスポンサーによる費用負担がなければ、プレミアリーグを去って12年目になるイングランド中部のクラブが、6億円台と言われる年俸で元イングランド代表のエースを迎えることは不可能だったに違いない。
チーム合流を待たず、ルーニーの背番号は「32」と発表されている。しかし、だからといって、「ギャンブル奨励」に力を貸しているかのように当人を責めるのはお門違いではないか。道徳心という名の鉈を振り降ろしたい人々は、ギャンブル関連の緩い国内法規を放置している英国政府や、ギャンブル系スポンサーが増える一方の国内サッカー界を統括するFA(サッカー協会)をターゲットにすべきだ。
プレミアリーグでは、今季20チームの半数が、胸にギャンブル業界に属する企業のロゴマークが入っている。2部リーグでは24チーム中17チーム。しかも、リーズとミドルズブラは、同じく『32レッド』がメインスポンサーときている。