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ダービー加入決定のルーニー。
「天才」の最後の雄姿を見逃すな! 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byUniphoto Press

posted2019/08/22 08:00

ダービー加入決定のルーニー。「天才」の最後の雄姿を見逃すな!<Number Web> photograph by Uniphoto Press

入団会見でフィリップ・コクー監督(左)と握手をかわすルーニー。

周囲を生かせるタイプの天才。

 ルーニーは「チームプレーヤー」としても秀逸だ。若い頃から周囲を生かせるタイプの天才だった。プレミアの歴代ベスト11のストライカー部門では、アラン・シアラーとティエリ・アンリにポジションを奪われるかもしれないが、両者を軽く上回る103アシストを記録している。これはFWとしてプレミアリーグ歴代最多で、クロスによるお膳立てのイメージが強いベッカムの80アシストにも大差をつけている。

 ルーニーといって思い出す名シーンと言えば、エバートン時代に決めた強烈なミドル、マンチェスター・ダービーで披露した華麗なオーバーヘッドがある。

 そんな得点シーンに加え、2013年4月、マンUがリーグ優勝を決めた一戦でのアシストを思い出すプレミア・ファンは筆者だけではないはずだ。自軍ハーフから届いたボールを左足ボレーで捉えたロビン・ファンペルシーが後に「夢のようなゴール」と回想することになる得点シーンを演出したルーニーのパスは、極上品だった。

 あの1本ほど有名ではないが、その半年ほど前、同じコンビが先発初共演を果たした一戦で、敵陣内からふわりと最終ライン越しに届けたラストパスも、左足のヒールで捉えたファンペルシーのフィニッシュと並ぶ妙技として脳裏に刻まれている。

将来的には監督としても楽しみ。

 ダービーではMFで起用されるだろう。リーグ戦を1勝1分でスタートしたダービーは、メイソン・マウント(現チェルシー)の不在を感じさせる。ルーニーの名アシストを再び目撃できる可能性があるとすれば、それだけでも今季後半のダービー戦に足を運ぶ価値はあるように思える。

 ルーニーが、プレミアと代表でのキャリア晩年に起用されるようになった中盤中央や、20代だった頃にも任された前線アウトサイドなどもこなすことができたのは、戦術理解力を含む優秀なサッカー頭脳の持ち主であったからでもある。

 となれば少し話は早いが、将来的には監督としてのルーニーも楽しみである。しかし、今回の移籍決定に際して本人もコメントしていたように、今はまだ「まずは選手として」の思いが強い。ダービーでの今季後半戦は、イングランドの人々にとって、母国が産んだ稀代の天才を素直に堪能するラストチャンス。“ルーニー・イン・ダービー”が、2020年の国内ヒット作となることを、願って止まない。

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ウェイン・ルーニー
ダービー・カウンティ

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