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“真の漢”デロッシがローマを去る。
熱狂を求め、アルゼンチンへ飛ぶ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/08/16 08:00
笑顔で「オリンピコ」を去ったデロッシ。“一番地獄に近い場所”といわれるボカの本拠地「ボンボネーラ」に戦いの場所を移す。
予期せぬ戦力外、愛するクラブへの提言。
5月中旬、ASローマの経営陣はデロッシへ来季戦力外であることを通告した。
長く衰えが明らかで40歳を越えていたトッティの引退時とはちがい、昨季も22試合に出場したデロッシはまだまだ有能な戦力のはずだった。
「(トッティのように)自分もローマでキャリアを全うできたらどんなにいいだろう」
デロッシの願いは誰もが知っていた。だからこそ唐突に突きつけられた別れは永遠の都に困惑と怒りをもたらした。本部オフィスにロマニスタ1000人がつめかけ、2時間にわたって横断幕と発炎筒で経営陣に抗議した。
それでも、会見に臨んだデロッシは言葉を荒げるでもなく、大人の男として言葉を連ねた。
自分がいなくなってもローマの生え抜きなら次期主将のDFフロレンツィやMFペッレグリーニがいるから心配ない。自分やトッティの猿真似はしてくれるな、と言った後で、「だが」と愛するクラブの未来へ提言した。
「ローマは地元出身者にこだわりすぎてはならない。ローマへ本当に必要なのは、練習にも試合にも魂こめて打ち込むプロの選手だ」
最後まで笑っていたデロッシ。
パルマとの最終節は雨になった。6万人の大観衆で埋まったオリンピコに別れを告げる主将は感極まって涙をこぼすだろうと誰もが思っていた。だが、気丈なデロッシは最後まで笑顔だった。
クラブHPに寄せた長い手紙にはこう書いた。
「明日は明日の風が吹くさ」