JリーグPRESSBACK NUMBER
永井秀樹新監督のヴェルディ再建策。
右腕は“Jバブル”を知る藤吉信次。
posted2019/08/11 09:00
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph by
J.LEAGUE
「人生って、なかなか自分の思ったとおりにはいかないもの。まさか現役の最後をこのクラブで終えられるとは考えていませんでしたし、今回の件もそれと同じです。トップの監督のオファーをいただき、迷う、迷わないといった次元の話ではなかった。常々、ヴェルディを再建したいと公言しながら、ここで逃げ出すわけにはいかないでしょう」
浅黒く日焼けした顔、その奥の目がいたずらっぽく笑っている。
7月17日、東京ヴェルディは成績不振によりギャリー・ジョン・ホワイト監督を解任し、東京Vユースを率いていた永井秀樹監督が新しい指揮官に就任すると発表した。
この人物においては、人生をサッカーに置き換えることも可能だろう。10代の頃から名うてのドリブラーとして鳴らし、国見高、国士舘大を経て、1992年、ヴェルディ川崎(現東京V)に加入。
「太く短く」をモットーに飛び込んだプロの世界だったが、現役生活は24年間に及び、2016シーズンを最後にスパイクを置いたときは、Jリーグ最年長の三浦知良(横浜FC)に次ぐ45歳となっていた。「選手として衰えた、みっともない姿は周りに見せまいと決めていたんですが、年を重ねるごとにボールを蹴る日々が愛おしくなってね。自分でも戸惑うほど、どんどんサッカーが好きになっていった」と当時を述懐している。
中学から知っている永井と藤吉。
7月20日のJ2第23節、東京Vは愛媛FCを3-2で下し、永井監督は就任最初のゲームを劇的な逆転勝利で飾った。
ベンチの前、コーチングスタッフと輪になって喜びを分かち合う光景は、これまで見られなかったものだ。右腕を務めるのは、同い年の盟友、藤吉信次コーチである。
「永井との付き合いは古いですよ。中学の頃から知っていて、年代別代表ではチームメイトでしたから。自分はヴェルディのユースにいて、あいつは国見、あと帝京の保坂(信之/東京Vユースのコーチを務め、9日、トップのコーチに就任)の3人でよく一緒にいたもんです。それぞれドリブルが得意で、互いの実力を認め合う仲」(藤吉コーチ)