鍛えるのではなく質を高めたい。

「練習量の不足は感じますね。本当はシーズン中でも午前と午後の2部練をやりたいくらい。こういう話をすると『（地獄の猛特訓で知られる）国見じゃないんだからさ』と言われることもあるんですが、選手を鍛えたいのではなく、プレーの質を高めたいんです。そのためにはある程度の量をこなすことが必要になる」

　トレーニングの内容を決めるコーチングスタッフとのミーティングでは、ボリューム過多によりコンディショニングに支障ありと指摘され、メニューを取り下げることもしばしばだ。

「本来、ヴェルディにとってJ1は戻るべき場所。ユースと違ってトップでは理想を追い求めるだけではなく、結果と内容の両方が求められるのは承知しています。自分の考えでは、いいサッカーをやれば勝てるんですよ。質の向上を追求していけば、必ず結果がついてくる。それが僕のサッカーの哲学であり信念です」

　ここまで永井監督は4戦指揮を執り、2勝1分1敗。8月4日、第26節の京都サンガF.C.戦では0－4の大敗を喫した。相手のタイトなディフェンスに苦しみミスを連発。標榜するスタイルの初手である、ボールを握ることさえできなかった。

「現役を長くやったものだから、気づいたら周りは年少者の監督だらけ」と笑う48歳の新人監督のキャリアは、序章のページがめくられたばかりだ。困難なミッションに挑み、それを乗り越えた先に、東京Vの新しい物語が立ち上がってくる。