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約半年のブランクからカムバック。
萩野公介が挑む新しい“体の使い方”。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byMATSUO.K/AFLO SPORT
posted2019/08/10 11:40
ワールドカップではすがすがしい笑顔を見せた萩野。次戦の茨城国体(9月14~16日)で国際標準タイムの突破を目指す。
「自ずと1枠は自分のものになる」
4日の200m自由形予選の後は、「体重を前へ前へ持って行く良い泳ぎはまだできない。僕の場合、ヒジを折っているので、なかなか小指側に力が入らない。左肩をうまく使えず、泳ぎを崩しているところもある」という自己分析もしていた。
7月の世界選手権で、好敵手であり盟友の瀬戸大也が200mと400mの個人メドレーで2冠を達成し、この2種目で東京五輪の内定を得た。五輪出場枠は1種目最大で2つ。つまりリオで萩野が金銀メダルを取ったこの2種目は1枠しか残っていないことになる。
だが、今の萩野はその状況すらパワーに替えることができる。
「1枠うんぬんは考えていない。自分のできる限りのことを100%やれば、自ずと1枠は自分のものになると考えている」
萩野にとって、5カ月以上という長期の戦線離脱は今回が初めてではない。'15年には遠征先のフランスで右ひじを骨折し、今回とほぼ同じ約5カ月半のブランクを経験した。リオ五輪後の'16年9月には右ひじの再手術をして翌年3月まで約半年間、レースから遠ざかった。けれどもその都度、必死の努力で復活してきた。
「この恩は東京五輪で返したい」
今後は9月の茨城国体に出て、今回届かなかったインターナショナル標準Cの突破を狙う。200m自由形なら1分47秒39、200m個人メドレーなら1分59秒23。国体では100m背泳ぎにも出る可能性があり、この種目のインターCは54秒03だ。
休養していた時期には欧州に一人旅もしたという。以前から世界遺産巡りが好きと話していたこともある萩野だから、歴史的な場所に足を運んで自分の心に耳を傾ける時間もあったのだろう。
「今はまだ練習しはじめて1カ月ちょっとだけど、体重も5kg落ちたし、何でもできるなと思っています」
そう言って場を和ませた。楽しさを味わえるようになれば萩野は強い。
「五輪への情熱が変わったことはない。この恩は東京五輪で返したい。出るからには1番を目指してがんばりたい」
リオ五輪の再現、いやそれ以上の景色を萩野は望んでいる。