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宝刀スプリットは甦るか。
田中将大の苦悩と試行錯誤。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty images
posted2019/08/10 11:50
8月7日現在、田中の被本塁打は22本。すでに昨年の25本に迫るペースだ。
小手先でごまかすわけにもいかない。
だが、誰よりも負けず嫌いで責任感の強い田中が、現実から目を背けるはずもない。投球フォームにクセが出ているのか、サインを盗まれているのか、それとも配球がパターン化しているのか――。メッタ打ちにされた原因は定かではない。ただ、いずれにしても、試合は待ってくれない。となれば、小手先でごまかしたり、逃げたりするわけにもいかない。
「自分でアジャストしていくしかないですから、他が変わるのを待つのか、自分が変わっていくのか。自分のできることをやっていくしかないので、なかなかすぐには答え出なくても、やり続けなければダメだと思うし、向き合い続けないといけないことだと思うので、それは必ずやっていくと思います」
活路を求めたのは、頼みの綱のスプリットだった。これまで、日米両球界で何年間にもわたって田中の投球を支えてきた宝刀。その最大の武器の握りをやや深めにアレンジし、フォークに近い球筋に変えた。勇気が必要なことだったが、着実な手応えとともに、光も見え始めた。
「戦い続けるしかないです」
「今は色んな意味で我慢しなきゃいけないところ、耐える時だなというふうには感じています。やっている方向はいい方向に行っていると思うので、ホントにあとちょっとしたところだと思います。大変な時ってすべてうまく行かなかったりしますけど、戦い続けるしかないです。しんどいですけど」
今はもがき苦しんでいても、立ち止まるわけにはいかない。
昨年のア・リーグ地区シリーズで、レッドソックス相手に勝利を挙げたのは、田中だけだった。
今季限りで現役を引退するCC・サバシア、昨季開幕投手のルイス・セベリーノら故障者が続出する中、2009年以来のヤンキース世界一に、田中の完全復調は、絶対に欠かせない。