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光源氏役で氷上でのラブシーンも。
表現者・高橋大輔が見せた新領域。
posted2019/08/11 11:40
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Kiichi Matsumoto
高橋大輔が主演をつとめる舞台「氷艶hyoen2019 -月光かりの如く-」が7月26~28日に行われ、大反響を呼んだ。スケーターはセリフあり生歌あり、役者はスケート靴を履いて殺陣を演じる。どんなアイスショーとも比較にはならない、新たな芸術の誕生ともいえる舞台だった。
前作の「氷艶hyoen2017『破沙羅』」は、スケートと歌舞伎のコラボレーションという位置づけで、2つの魅力が見事に融合した芸術だった。
今回は、演出の宮本亜門が「異種格闘技エンターテイメント」と評したように、そもそもスケートに軸足を置いていない。ミュージカル、演劇、スケート、プロジェクションマッピング、和太鼓、美しい衣装などさまざまな要素を詰め込んだ、一言では説明できないような舞台だ。
終わった瞬間に「もう一度見たい!」
着物や照明の芸術的な美しさに見入ったかと思えば、コミカルな演出で笑いをとる。そして美しい歌声を会場に響かせたかと思うと、クールなスケートの演技が披露される。
さらにストーリーも、予想できない出来事が次々と展開され、まるで韓流ドラマのように引き込まれていく。150分の舞台はあっと言う間で、終わった瞬間に「もう一度見たい!」と思わせる、刺激の多いエンターテイメントに仕上がった。
この複雑な舞台を成功に導いた一番の立役者は、もちろん光源氏を演じる高橋大輔だ。高橋自身はこの舞台を通して、表現力の領域を大きく伸ばした。
もともと演技派の高橋だが、通常のスケートのプログラムならば、1つのプログラムで1つの役を演じる。2分40秒や4分という短い競技時間では、長いストーリーまでは語ることが出来ない。しかし今回は150分の長いストーリーを通じて、子供から大人へと成長していく光源氏の心の変化を演じた。