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光源氏役で氷上でのラブシーンも。
表現者・高橋大輔が見せた新領域。
 

text by

野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2019/08/11 11:40

光源氏役で氷上でのラブシーンも。表現者・高橋大輔が見せた新領域。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

初日公演後「残りの公演も精一杯魅力を伝え、この勢いを持ってシーズンを迎えられたら」と今後についてコメントした高橋。

リプニツカヤはシャイな性格だが……。

 またユリア・リプニツカヤは、人生2度目のアイスショーという貴重な舞台を踏んだ。'14年ソチ五輪団体では、史上最年少の15歳で金メダルを獲得したものの、'17年に引退。その後はスケートから離れていたが、昨年からコーチとして氷上に復帰したばかり。代名詞ともいえる、完全に足を真上まで持ち上げるキャンドルスピンは健在だった。

 もともとシャイな性格の彼女だが、今回のオファーを受けて、ロシア語の源氏物語の文献を読むなど、役作りを研究。

「日本人女性を演じるのが難しいかと聞かれることもありますが、答えはノーです。1人のスケーターとして異なる国と文化のスタイルを試すのは良いことですし、日本の伝統文化を自分の表現に取り入れることに違和感を感じませんでした」という。

 ピンクの着物を身にまとい、可憐な少女に変身。事前発表の写真では黒いカツラをかぶっていたのだが、本番は金髪のロングヘアで登場した。これが不思議と自然に、平安時代の少女のように見えてしまう。

 高橋も「彼女ならではの透明感ある美しさが、紫の上の若さ、そしてミステリアスな魅力へと反映されていると思います」と話していた。

新しい総合芸術が生まれた。

 それ以外にも、朱雀帝を演じたステファン・ランビエルはまさに適役で、彼の貴公子らしいたたずまいは、平安時代の雅な空気感を見事に創り出していた。

 福士誠治、波岡一喜といった俳優陣らは、スケートを特訓し、素晴らしい身のこなしを氷上で披露。西岡徳馬も、カーテンコールではスケート靴で現れた。源氏や朱雀、紫の上の幼少期を演じた子役スケーターたちも、本当に可愛らしく、外せない配役だった。

 スケーターも役者も、また美術も含めたすべてのスタッフが一体化して生まれた、新しい総合芸術。

 高橋も「今後は、今回のように競技以外でスケーターが活躍できる場所、表現者として表現できる環境づくりを目指したい」という。

 スケートの可能性は、まだまだ無限にあることを感じさせてくれる3日間だった。
 

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