フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
五輪銅メダリスト・ワグナーも告発。
性的虐待問題に揺れる米スケート界。
posted2019/08/12 11:40
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
アメリカのフィギュアスケート界が、性的虐待問題で大揺れに揺れている。
その発端は、今年の1月に元全米ペアチャンピオン、ジョン・コフリンがUSセンター・フォー・セイフスポーツ(以下、セイフスポーツ)およびUSFSA(米国フィギュアスケート連盟)から暫定的な活動停止処分を受けたときだった。
セイフスポーツとは、水泳、女子体操などで相次いだ性的虐待告発に対応すべく、2017年に米国オリンピック委員会が設立した監視団体である。アスリートへの性的虐待のみならず、暴力や精神的な虐待に遭った被害者の駆け込み寺として、設置された。
コフリンは活動停止を言い渡された翌日の1月18日、カンザスシティの父親の自宅で自殺した。このショッキングなニュースは全米で大きく報道され、次第に詳細が明らかになっていった。
元パートナーからの告発。
コフリンはセイフスポーツを通じて3人の女性から性的虐待の告発を受けており、その中に被害当時未成年だった者も混ざっている、とUSトゥデイが報道した。
本人は告発を受けた後、警察官をしていた自分の父親に「事実無根」だと主張したという。だが彼が自死した1カ月後にセイフスポーツは本件に関して「(容疑者死亡により)アスリートへの脅威は消滅した」という理由で、捜査の打ち切りを発表。真実は永遠に藪の中かと思われた。
新たな展開が見られたのは、2019年5月。14歳から17歳まで彼とペアを組んでいたブリジット・ナミオカがソーシャルメディアを通して、犠牲者の一人は自分であったことを告白したときのこと。ペアを組んでいた当時、2年間にわたってコフリンから性的虐待を受けていたという。
「無実の人は自殺などしない」「彼は10人以上の少女を苦しめてきた」と主張した。それまで「疑わしきは罰せず」のスタンスを貫いてきた彼のサポーターたちも、元パートナーからの生々しい告白に衝撃を受けた。