スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
サマートレードと最後のドラマ。
アストロズ「恐るべき布陣」の完成。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2019/08/03 09:00
7月31日、ダイヤモンドバックスのザック・グリンキーは登板中にトレードが発表された。移籍前最後の登板は5回2失点。
ホゼ・ラミレスが極度の打撃不振。
こうなると、喉から手が出るほど欲しいのは「打てる外野手」だ。
打率、打点、本塁打数のどれをとっても、7月末現在、インディアンスは大リーグ全体で20位前後と低迷している。主砲ホゼ・ラミレスが守備シフトでスイングを狂わされた末、極度の打撃不振に陥ったことも大きいが、長打力のある外野手がほぼ皆無という現状では、ポストシーズンを勝ち抜くのはむずかしい。
そこで獲得したのが、プイグとレイエスだ。問題児プイグは人気の割に穴が多いが、それでも今季は22本塁打を記録している。レイエスの印象は地味かもしれないが、196センチ、124キロの巨体から、めっぽう速い打球を遠くへ飛ばす。今季すでに27本塁打。インディアンスは彼をDHに起用するのではないか。ナ・リーグにいたふたりの本塁打数を単純に加算するだけで、チーム本塁打総数(144本+49本)は、7月31日現在の19位から全体2位(1位はツインズの209本、3位はドジャースの183本)へと実質的に跳ね上がる。この程度の計算でポストシーズンの行方を占うことはできないが、戻ってくるサラザールやクルーバーが本来の力量を7割でも発揮できたら、インディアンスの存在はダークホースとして浮上する。
他の有力球団の補強のポイントは?
では、トレード市場の買い手と目される他の有力球団は、どのようなポイントで補強を図ったのだろうか。
ヤンキースとアストロズは、先発投手が欲しかった。とくにヤンキースは、先発5人の防御率が、そろって4点台~5点台だ。田中将大は、決め球のスプリットを使えず、苦しまぎれのスライダーを狙い打ちされる苦境がつづく。左腕トリオも冴えない。ジェームズ・パクストンの6月から7月にかけての防御率は6.38という惨状だし、J.A.ハップやCC・サバシアは被本塁打数が多すぎる。