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サマートレードと最後のドラマ。
アストロズ「恐るべき布陣」の完成。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2019/08/03 09:00
7月31日、ダイヤモンドバックスのザック・グリンキーは登板中にトレードが発表された。移籍前最後の登板は5回2失点。
ヤンキースの収穫はゼロに近い。
そこでヤンキースは、メッツのノア・シンダーガード、ジャイアンツのマディソン・バムガーナー、ダイヤモンドバックスのロビー・レイといった一流投手を標的にした。が、宿敵メッツが自軍のエースをヤンキースに売り渡すのはどだい無理な相談だったし、ここへ来て追撃急(7月は19勝6敗)のジャイアンツも、ポストシーズンが視野に入ったことで、バムガーナー残留を確定させてしまった。レイも動かず、結局、収穫はゼロに近い。
一方のアストロズは、驚きの大収穫を挙げた。このチームは、もともと3本柱がしっかりしている。ジャスティン・ヴァーランダー、ゲリット・コール、ウェイド・マイリー。3人とも2点台後半~3点台前半の防御率を崩さないし、コールとヴァーランダーは今季、リーグ最多奪三振のトップ争いをつづけている。
アストロズ先発陣は大リーグ随一のものに。
問題は、第4の先発がやや弱かったことだが、トレード締切りの直前、ダイヤモンドバックスの超大物ザック・グリンキーの加入が決まった。もうひとり、ブルージェイズのアーロン・サンチェス('16年にはア・リーグ防御率第1位)も加わったことで、恐るべき布陣の完成だ。ヴァーランダー、コール、グリンキーの3人の勝敗は、今季だけで36勝13敗(7月31日現在)。17年と18年を合算すると、3人で90勝52敗と圧倒的だ。マイリーは4番手にまわるだろう。
これでアストロズの先発陣は、大リーグ30球団中随一のものとなった。ア・リーグの大敵ヤンキースや、ナ・リーグの本命ドジャース(左の強力なリリーヴァーが欲しかった)が、さしたる補強に成功しなかったことを思うと、ポストシーズンの戦いは、どうしてもアストロズ中心に推移するだろう。それにしても、土壇場でまたもやとんでもないドラマが起こったものだ。トレードやFA市場の行方は、やはり最後の最後まで眼を離せない。