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田中陽子「サッカーも合う気がする」。
違和感を乗り越え、笑顔でスペインへ。
posted2019/08/04 11:30
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph by
Yuki Suenaga
まだ19歳だった2012年、田中陽子は女子サッカー界のニューヒロインとして脚光を浴びた。
時代は“なでしこブーム”の真っただ中。2011年にワールドカップを制し、この年のロンドン五輪でも準優勝に輝いた。田中が名を連ねたU-20日本代表は「ヤングなでしこ」と称され、彼女は“可愛くてうまい選手”の1人として注目された。
1993年生まれ。現在26歳。山口県出身。中学生からはいわゆるエリート育成機関である「JFAアカデミー」の1期生として単身福島にわたり、卒業後の2012年にINAC神戸レオネッサに加入した。3年後の2015年からはノジマステラ神奈川相模原でプレー。今年6月に退団するまで、約4年半の歳月をこのチームで過ごした。
日本で際立つ成績を残したわけではない。得点王に輝いたわけでもMVPを受賞したわけでもない。日本代表“なでしこジャパン”に名を連ねたのは2013年が最後で、今年行われた女子ワールドカップフランス大会にも出場していない。
しかし今、田中は再び注目を集めている。約1カ月前の6月後半、彼女はノジマステラを退団し、海外挑戦することを発表したのである。
女子サッカー熱が高まるスペインへ。
次なる舞台は、スペイン女子1部リーグ。所属先は、南部の街ウエルバに本拠地を構えるスポルティング・ウエルバだ。実は今、スペインでは空前の女子サッカーブームが巻き起こっており、3月に行われたアトレティコ・マドリーvs.バルセロナの首位決戦は6万人以上の観客がスタンドを埋め尽くしたという。田中もその熱狂の渦中に、自らの意志で飛び込もうとしている。
「海外志向はもともとありました。実は去年の終わりくらいにスポルティング・ウエルバからオファーをもらって、その瞬間は『行きたい』と思ったけれど、悩んだ末に見送ることを決めたんです。チームの調子は良かったですし、ノジマステラのみんなともっと一緒にやりたいという気持ちがあったから。それに、コンディションの不安もあって」
しかしその半年後、再びスポルティング・ウエルバからオファーが届いた。その熱意に心を動かされ、田中は満を持してスペインに渡ることを決めた。