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鈴木優磨、鹿島での17年間と別れ。
手本の金崎夢生を「必ず超えます」。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/07/17 18:00
クラブW杯で一躍有名人になるなど、鈴木優磨は“何かをしてくれそうな”雰囲気がある。ベルギーで大化けなるか、注目したい。
20点という目標とステップアップ。
ベルギーリーグとはいえ、出場機会が保証されていないことは、鈴木も理解している。それでも、半年近く試合に出ていないにもかかわらず、再度オファーをくれたクラブの自分への評価は大きな信頼感を生んだはずだ。
シント=トロイデンVVのCEOはFC東京などで強化責任者を務めた立石敬之である。同じ日本人だからこそ、分かり合えることも多かった。またこの夏、冨安健洋のボローニャ移籍やドイツへの移籍が噂される遠藤航の存在も、欧州でのファーストステップを選ぶ上での後押しになった。
「ヨーロッパの1部リーグでやれば成長も速いですし、(他のクラブなどに)見られている数も違う。ステップアップもできるというのは見てとれたので、この決断をさらに後押しするものになりました」
ストライカーは、その力量をゴール数で評価される。ベルギーリーグのストライカーならば、2桁得点ぎりぎりでは物足りない。シーズン20得点に迫る数字が求められるだろう。
「それは理解しているし、覚悟も持っています。たとえば20得点など、数字が大事なのと同時に、ステップアップするというのがもっとも重要。たとえ、いきなりプレミアへ行けなくても、もう1つクラブを挟むというのは当然のことだと思っています」
プロ1年目で「クビになるかも」。
茶髪の外見だけでなく、プレーからもヤンチャさ、ふてぶてしさも漂わせる鈴木だが、移籍会見では発言を選ぶし、周囲に繊細な心配りできる男だ。
また選手としてのクレバーさは、彼の成長曲線を見れば理解できるだろう。
鹿島アントラーズのサッカースクールに参加したのは、小学1年生の頃。そこからジュニア、ジュニアユース、ユースと鹿島のアカデミーで育った。
ユース時代にはトップチームの合宿や練習に参加する機会もあったが、「鼻をへし折られただけだった」と鈴木本人が振り返ったことがある。そう年齢の変わらない植田直通にすら、はね飛ばされた。そんな経験があったから、自分がトップチームに昇格してプロになれるとは思えなかった。トップチーム昇格の可能性を打診されても、即決はできなかったという。
「プロでやっていけるとは思えず、1年でクビになるかもしれない」
そんな不安を打ち消したのは、長年鹿島のシャツを着てプレーしてきたという事実があったからだ。何度かやめたいと考えて、練習を休んでクラスメイトと遊んだこともある。でも結局は物足りず、「サッカーをやりたい」とグラウンドへ戻った。