球体とリズムBACK NUMBER
いま世界で一番かっこいい女性。
女子W杯連覇、ミーガン・ラピノー。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/07/12 11:00
ミーガン・ラピーノーのファッションも言動も、スポーツが持つ「垣根を超える力」を見事に体現している。
才能揃いのアメリカでも際立つ存在感。
7月7日の決勝は女子サッカーのレベルの高まりを感じさせるものだった。
オランダにはビビアン・ミーデマという22歳のエースがいて、白人女性版パトリック・クライファートとでも形容すべき細長い体躯の独特なリズムのドリブルで面白い場面を創っていた。
対する王者アメリカは、エースのアレックス・モーガンの瑞々しいアスレティシズムはもちろん、背番号3の中盤の番人サマンサ・ミュイスの圧倒的なプレゼンス、勝負を決定づける鮮やかなドリブルシュートを見舞った24歳のMFローズ・ラベルの技も光った。
それでも一番のスターダムはラピノーがさらった。
アメリカの先制点は流行りのVARで得たPKから生まれた。テクノロジーの賛否はさておき、極めて重圧のかかる場面で彼女は全く動じずにキックを右に沈めた。
その前のPK──ラウンド16のスペイン戦だ──では、2つとも左に決めていたけれども。
ラピノーは4年前からチャーミングな選手だった。今の彼女には、そこに揺るぎない自信と静かな風格が備わっている。プレーにも発言にも説得力が出て当然だ。
トランプと大統領選を戦ったら?
女子選手の待遇の向上を訴え続ける彼女は、今の大統領を快く思っていない人々の希望にさえなりつつあるようだ。
MSNBCのナイトショーでは、インタビュアーが「あなたのスポーツと国全体への影響について」と前置きしたうえで、「パブリック・ポリシー(アメリカの統計会社)の統計で、あなた対トランプの大統領選挙の仮想統計がありました。あなたは僅差で勝利しています」と投げかけた。
ラピノーは「大統領選なんて、気をつけて発言してくださいよ」と笑って返した。