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オリックス有利に見えるトレード。
中日の狙いと松井雅人の数奇な運命。
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2019/07/04 11:30
オリックスへのトレードが発表された松井雅人(右)は昨季、岩瀬仁紀の1000試合登板の際にも女房役を務めるなど活躍を見せていた。
中日の補強は将来を見据えたもの。
さて、大きな穴が2つとも埋まったオリックスに対して、中日は目先だけでなく中長期スパンでの補強を優先したと見る。出て行く「W松井」がいずれも31歳なのに対して、入ってくるのは28歳の松葉と25歳の武田だ。
ドラフト1位でオリックスに入団した左腕の松葉は通算27勝。一軍では今シーズンまだ勝ち星がないが、二軍では3勝1敗、防御率2.64と環境を変えた場合の変わり身は期待できる。「リーグが変わることでプラスの要素を出してくれれば」と話した与田監督の意向が大きく働いたとも聞く。
「ドラフト1位」のトレード獲得は、大田泰示、藤岡貴裕、杉浦稔大など補強巧者の日本ハムの常套手段。評価されていた能力を発揮しきれていなくても、環境を変えることで花開くという考えだ。
武田は福岡県の自由ヶ丘高時代には「新庄二世」と呼ばれた高い身体能力の持ち主だ。2年前に一軍で97試合、打率.295という成績を残しており、覚醒すれば大島洋平、平田良介の後継者としてレギュラーとなる可能性もある。
ただ、今シーズンは二軍でも打率.164と苦しんでおり、2年目の2014年に8勝を挙げた松葉同様、成績が下降線を描いているのは否めない。
松井雅人はマレーロ10万号の立役者?
余談ではあるが、一部のオリックスファンにとって松井雅は「あのときのキャッチャー」として記憶に刻み込まれているかもしれない。
2017年6月9日(京セラドーム大阪)。クリス・マレーロが小笠原慎之介から放った左中間へのフェンスオーバーは、ホームベース踏み忘れにより「三塁打」になった。そこを見逃すことなく、審判に「空過」をアピールした捕手こそ松井雅である。
ちなみにこの踏み忘れで1本ずれたおかげで、のちにマレーロは「NPB通算10万号」を放ち、再び球史に名を刻んでいる。今シーズンも残留。踏み忘れた男と見逃さなかった男が、運命の糸に導かれチームメートとなるのである。
なお、新たな所属先での背番号はモヤが1、松井雅が33、松井佑が56。松葉は38、武田は56で、こちらは6日に新入団会見が行われることが中日球団から発表されている。