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セーブ失敗の新人をなぜ再び9回に?
工藤監督がドラ1甲斐野を信じた訳。 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byKyodo News

posted2019/07/02 11:40

セーブ失敗の新人をなぜ再び9回に?工藤監督がドラ1甲斐野を信じた訳。<Number Web> photograph by Kyodo News

4月にセットアッパーに定着し、ルーキーによる開幕からの連続無失点試合数の新記録を樹立した甲斐野央。

勝利まであと1人での降板。

 先頭打者の中村悠平を直球2球で遊ゴロに仕留めたが、それでも心はふわふわと落ち着かない。続く宮本丈にフルカウントから四球。荒木貴裕には右前に運ばれて一、二塁とされた。

 3点リードというプラス思考はもうない。一発出れば同点という恐怖感と戦いながら、必死に右腕を振り抜いた。

 2アウト後、山田哲人を迎えて警戒心はより一層大きくなる。手元が狂って暴投となり二、三塁。結局山田は歩かせて満塁に。そして一発逆転サヨナラと傷口が広がったところで青木宣親に押し出し四球を与えて、ついに失点した。

 まだ2点リード。勝利まであと1人だ。しかし、工藤監督がダグアウトから出てきた。甲斐野は唇をかみしめながら降板し、ベンチから祈るように戦況を見つめた。ホークスは何とか勝利。沸き上がるチームメイトの中で必死に前を向いてハイタッチを繰り返した。

 やはり9回のマウンドは、新人には荷が重すぎたのか。

モイネロではなく甲斐野に託した。

 そもそもホークスには打ってつけの存在がいる。リバン・モイネロだ。来日3年目のキューバ人左腕は7月1日時点で35試合登板中、自責点を喫したのは2試合のみ。防御率1.06の安定感を誇る。

 今季自己最速を更新する156キロをマークした直球とチェンジアップを武器に、奪三振率も12.97をマークしている。森が離脱した当初は、モイネロが代役守護神の一番手ではないかとも思われていた。

 しかし、冒頭で述べたとおり、2日後に訪れたセーブシチュエーションで工藤監督は再び甲斐野に9回のマウンドを託したのである。

 この日は1点差というより厳しい場面だった。だが、甲斐野は別人のように……いや、これが本来の姿とばかりに大胆に右腕を振り抜いた。

【次ページ】 プロ初セーブと森からのLINE。

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