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セーブ失敗の新人をなぜ再び9回に?
工藤監督がドラ1甲斐野を信じた訳。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2019/07/02 11:40
4月にセットアッパーに定着し、ルーキーによる開幕からの連続無失点試合数の新記録を樹立した甲斐野央。
プロ初セーブと森からのLINE。
最初の打者をわずか1球で左飛に打ち取った。
2人目は前回、四球を与えた山田だ。被弾すれば同点だが、もう臆病な甲斐野はそこにいない。変化球を集めて追い込むと最後はスライダーを外角低めの絶妙なコースに決めて空振り三振を奪ってみせた。
最後は山崎晃大朗を154キロ直球で見逃し三振。会心の打者3人斬りでプロ初セーブを記録したのだった。
「リリーフに失敗した後、周りからたくさんの声を掛けてもらいました。すごく有難かったです。ただ、後で振り返って一番に思い出すのは森さんからの言葉でした。
試合のすぐ後にLINEが入りました。『いつも通り、オマエらしくやればいい』と。すごくマジメだったんで(笑)。(番記者の)皆さんはご存知のとおり、普段はそんな感じじゃないですから」
森が可愛がる甲斐野の成長ぶり。
1年目の甲斐野を誰よりも可愛がっているのは森だ。
様子を眺めていると、グラブを奪ったかと思うと球場客席に投げ入れてしまうイタズラがあったり、まるで猛獣同士がじゃれ合ったりしているような光景もあったりするが、甲斐野は「1年目で何も分からない中でチームに入って、最初の頃から気にかけてもらえている。それは本当にありがたいし、嬉しいです」と笑顔を浮かべる。
「9回に投げる試合が何度かありましたが、試合中の流れで投げる順番は決まっていきます。やりにくさはない。他のイニングで投げる時も同じですから。9回を投げる時も、『9番目のイニング』だと考えるようにしています」
ひとつ殻を破ったことで、ドラフト1位新人はさらに逞しく頼れる存在へと成長した。
シーズンは折り返しを迎えたところで、夏本番を迎えるこれからが大事な勝負所になってくる。甲斐野の存在はホークスにとって、とてつもなく大きい。