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佐藤悠基が語るMGCへの決意・後編。
「単純に力があればねじ伏せられる」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byYuki Suenaga
posted2019/06/30 17:05
マラソン選手として強くなることを意識していく先に、勝利がある。佐藤悠基は強いまなざしで語っていた。
五輪で勝負できないと意味がない。
――MGCに勝ち、五輪でも勝てる強さが必要だと。
「僕はロンドン五輪に出ていますけど、行っただけでまったく世界と戦えず、相手にならなかった。五輪に出ても勝負できないと意味がない。マラソンも東京五輪に出ただけでは自分の中では何の価値もないんです。世界と勝負して結果的にメダルに届かなくても惜しいところまで行ったぐらいのところまでいかないと」
MGCには同じチームの村澤明伸も出場する。
佐藤は「チームメイトといってもチームはあってないようなものですからね。それに後輩ですがトレーニングの考え方が違うので練習はバラバラです」と苦笑して言った。
日清食品グループは、1月に陸上部の活動を大幅に縮小し、現在チームに残るメンバーは佐藤と村澤を中心とした5名だけになった。名門チームの突然の発表は他の実業団チーム、陸上界に大きな衝撃を与えたが、本人にはどのような影響を与えたのだろうか。
陸上部縮小の話に、ヤバいかなと。
――陸上部縮小の話を聞いた時は?
「1月、陸連の合宿中に部長が来るということになり、何かしら話があると思っていましたし、個人的にはヤバいかなって思っていました。僕個人は3年連続でニューイヤー駅伝で順位を落としていたので……。縮小の話は驚きましたけど、どうすることもできない。個人的にはMGCを終えるまでは今の環境のままでいいと思っています。競技に集中できますしね」
――同世代の川内優輝選手などプロになる選手も増えてきています。プロという環境は陸上部の縮小後、考えたりしませんでしたか。
「今の自分の考えは、基本的にプロも実業団も一緒かなと思っています。トップを目指してチャレンジしていくのはプロも実業団も変わらない。自分が高みを目指す上でのやり方の違いだけかなと。プロになってスポンサーを獲得して自由にやりたければプロになればいいし、交渉とか他の雑務を任せて競技だけに集中したいのであれば実業団でやればいい。
僕はできるだけ走りに集中して、他の時間は体のケアに使いたいから実業団に残っています。ただ、MGCで勝った後は分からないですね。一番自分を売り込みやすい時期でもあるので、何かしら考えていかないと。僕も家族を養っていかないといけないので」