準決勝2番目のタイムは桐生ではなく小池。

　サニブラウンが圧倒的な本命であることは間違いないが、もうひとり“絶好調”と思われる選手がいる。

　小池祐貴（住友電工）だ。

　昨年のアジア大会200mチャンピオンは、今季10秒04をマークして勢いに乗っているが、予選の段階から動きが良く、しかも自信が全身から満ち溢れている。

　準決勝では全体では2番目のタイムとなる10秒09をマークし、同学年の桐生祥秀（日本生命）に先着した。

　大会前はサニブラウンと桐生の対決に注目が集まっていたが、ここに来て「第三の男」は対抗馬へとのし上がってきた。

　決勝に向けても小池は自信をのぞかせる。

「準決勝では全力に近いレースをしようと思っていて、ほぼベストのレースが出来た感じです。プラン通りに運んでいるので、今日より明日はいい走りが出来るんじゃないかと思います」

　不敵な面構えもいい。サニブラウンと並走することで、小池も自己ベストを更新する可能性が高いと見る。

桐生もまだ本気は見せていない。

　そして、桐生祥秀も気になる。

　準決勝では小池に先着を許し、タイムも10秒22。予選と合わせ、中盤からの切れ味を欠いているが、果たして決勝に向けて状態を上げてくることが出来るだろうか？

　準決勝を振り返ってのコメントでは、

「60mで追うのをやめて、横を確認して力を抜いた感じでした。別に通ればいいかな、と思って」

　と全力は出し切っていないと、自らの可能性を信じている印象を受けた。

　日本選手権では結果が残せないことが多く、本人もそれを意識しているだけに、追い込まれた状況でどれだけの爆発力を見せられるか。

　初めて9秒台をマークした一昨年の日本インカレでは、多田に注目が集まる中、桐生が形勢をひっくり返した。その再現ができるかどうか……。

　日本選手権で、これだけワクワクできる100mを見られるとは、夢にも思わなかった。

　役者がそろった100m決勝、9秒台の決着に期待したい。